2003

9月21日 ちょっと改訂しました


今年の目玉はなんと言っても960系XTR。そしてコンフォートバイク向けのネクサーブC500やブラック仕様の105、ゴールド仕様LX、そしてPD−7750と言ったところでしょうか。
そうそう、パンフレットには詳細が載っていないのですが、カプレオという小径車用のコンポーネントも発表されました。

XTRロゴ
ST-M965
まずはXTRから。
ニューXTRの一番の話題はデュアルコントロールレバーでしょう。ブレーキレバーにシフトレバーが内蔵されました。ブレーキレバーを上下させることにより変速を可能にしました。
このことによりハンドルのいかなるポジションにおいても(グリップ部のみならず、バーエンド、はたまたハンドルの内側に手を添えていても)変速を可能としたとのことです。ラピッドライズのため、フロント、リア共にシフトダウンはブレーキレバーを指で上に押し上げて操作します。
実際に操作してみてですが、はっきり言って操作しづらかった。
まず、シフトダウン(軽くする方=ワイヤーリリース)ですがレバーを上に跳ね上げます。ブレーキレバーを握るやり方は人それぞれ色々ですが、人差し指1フィンガーで操作する方には問題ないと思われます。中指を上に上げることによりシフトダウンができます。それ以外の方法で操作される方には(私は中指と薬指でブレーキレバーを握る)今ひとつと思われます。まあそんな方のために初めから補助レバーが同梱されていますので、そっちで操作した方がよさそう。
また操作方法によってはレバーのエッジ部が指に当たって痛かったです。そのうちにXTR対応グローブがどこからか出るでしょう。
シフトアップ(重くする方=ワイヤー引っ張る)はレバーストロークが多かったのがちょっと気になりました。にもかかわらず特にフロント側は操作も重いのでちょっと気になりました。コンフォート系C900のフロントディレイラーに装備されているクランク回転力を利用したカムによるシフトチェンジ(SPCM)が可能になればボタン操作でチェンジできるので良いかも。
なお、今回のモデルからシフターのみやブレーキレバーのみという形態がなくなりました。注文の際にはVブレーキと使うのか、ディスクブレーキと使うのかを決めなければなりません。

リアディレイラー
ラピッドライズ(ローノーマル)のみとなりました。剛性向上によりシフトレスポンスがアップしたとのことです。また、シフトワイヤーには専用のシリコングリス封入のワイヤーエンドキャップが採用されています。これによりフリクションロスが低減したとのことです。

フロントディレイラー
現行XTRのみの装備であったディファレンシャルプレート(ディレイラーの内側プレートと外側プレートが独立して動く)が省かれてしまいました。現行モデルではXTRのフロント変速は他の機種と明らかに違うのが体感できますが(ね、XTRオーナーの皆さん!)、これがディファレンシャルプレートによる物だとするとこれが省かれたことはかなり痛いです。
ただディレイラーを動かすリンクのシャフト間距離が広くなったために剛性がアップしたとのこと。
ちょっと乗ってみましたがなんとなく現行機種の方がよいような変わらないような....が、ローラー台に乗っての試乗しかできなかったし、明らかにワイヤーは余分に長かったしではっきりとは言えません。シビアなコンディションで乗ってみなければ。
そういえばEタイプディレイラーのBBに挟まるところがカーボンだったのにアルミになってしまいました。

スプロケット
現行モデルではロー側3枚がチタン製ですが、4枚がチタンになりました。また12〜34Tの他に11〜34T、11〜32Tも発売になります。

ブレーキ
ディスクブレーキとVブレーキの2本立てとなります。
BR-M965ディスクブレーキ
通常のキャリパーのように真ん中で2つに割ったやつをボルトで繋いでいるのではなく、鍛造削り出しのモノブロック(一体成型)となっています。
一体成型だから剛性はバッチリ出るし、精度も高い。さらに左右のボディを繋ぐボルトが不要になるので軽量化にも貢献。っていうか軽量化のためにモノブロックにしているのですが。
対向2ピストンとなっています。
ローターは通常の6本ボルトで止めるタイプではなくセンターロックのスプライン勘合になっています。また、ローター内周部はアルミとなっており軽量化されてはいますが、一部のモーターサイクルや高額スポーツカーのようなフローティングタイプではありません。
一般的にディスクブレーキにすると重量増を招きますが、ニューXTRではディスクブレーキ化による重量増をパーツトータルで考えて設計されており、純粋な重量増加分は110gちょっととのことですが、ディスクブレーキ化によりカンチ台座の取り外し等ができることを考えると、Vブレーキと遜色のない重量になると言っておりました。
Vブレーキ
と言うわけでシマノとしてはディスクブレーキ化を進めています。ニューXTRのデフォルトブレーキはディスクと考えて良いでしょう。だけどVももちろん存在します。が、現行モデルと比べてさして特徴なし。

ハブ
HB-M965ディスクブレーキ用とVブレーキ用があります。ディスクブレーキ用はローターの取り付け方法が通常の6ボルトパターンではなく、スプライン勘合によるセンターロック方式となりました。よって、XTRディスクを付けるにはXTRハブじゃないと装着できません。
センターロック方式になることによりローターの脱着が簡単になりますし、なにより位置決めが正確になります。これはとっても良い。6ボルトタイプだとボルト穴の公差範囲内でローターにガタがあります。そのガタの分だけローターが半径方向に偏心しうるのですが、それがかなり低減されます。
ディスク用ハブにはリムブレーキ使用時にスプライン部に装着できるカバーが装備されます。もちろんVブレーキ用ハブにはローター取り付けのスプラインは切ってありません。
なお、フリー部は現行同様チタン製です。

FC-M960クランク&BB
ニューXTRのもう一つの話題がクランクでしょう。
右クランクにBBのシャフトを圧入してしまいました。BBのベアリングを装着した後に右クランクを装着し、左クランクを取り付けてねじを締めればOK。まあ、クランクの取り付けはBMXの3ピースタイプと似たような装着方法になります。
また、ぶっといBBシャフトのせいでBBのベアリングはBBシェル内に収まりません。よって、BBシェルの外側にベアリングを装着することになり、支持間隔が広がったために剛性アップを果たしました。
この装着方法によりmrpなどに代表されるチェーンデバイスを取り付けることは不可能になりました
私の思い違いでした。装着可能です、おそらく。現物手にして考えないと正確なことは言えない。でも今までのクランクとは異なり、スパイダーの内側にアウターチェーンリングがくるし、アウター外側(と言うかスパイダー外側)にガードを付けようにも”面”が出ていない(R状になっている)ので装着するのは無理でしょう。
なお、新方式の採用により、現行モデルに比べ約70gの軽量化を果たしたとのことです。
なお、今回のXTRクランク変更に伴い、XT、LXクランクも若干の変更を受けました。今まで以上にマッスルな太クランクになり。クランクの中空率も30から40%程度に上がっており、剛性アップをしながらも軽量化を果たしております。

ホイール
WH-M965ニューXTR登場によりXTRホイールも新しくなります。
ニューXTRに合わせて、センターロックタイプのハブになります。またUST規格のチューブレスとなります。USTチューブレスなので通常のタイヤ+チューブで走ることもできます。が、これでチューブレスが一気にブレークするか??
なお重量はペアで1650g、リムは1本約400gということです。

なお、ニューXTRの発売予定は12下旬から1月と言うことだそうです。

PD−7750

クリートとペダルシューズに久リートを取り付けた状態

あっと驚く(驚かない?)新型ペダルSPD−SL。ロード用SPDでコケたシマノはSPD−Rで起死回生、LOOKを蹴落とし(と言っても過言ではないと思う)TIMEと双璧をなすまでにシェアを獲得した。そんなシマノを突き放すかのようにTIMEは今年ニューモデルインパクトを発売、シマノを突き放そうとした。が、シマノは黙っていなかったんですね、SPD−SLなんてペダルをリリースしてきました。
ビンディング構造を見直し約50gの軽量化を実現。またペダルとシューズのコンタクトエリアが広がり更に効率の良いパワー伝達が可能になったとのこと。
そしてビンディング部の樹脂化とクリートへのラバーパッド装着、及び重量バランスの見直しによりペダル非装着時のバランスが良くなりペダルを拾いやすくなったそうです。
実際に試乗してみましたが、たしかにSPD−Rよりビンディングを拾いやすくなりました。SPD−Rは金属ペダルに金属クリートでしたからちょっと滑りやすかった。更に装着した際のクリック感もあんまりなじめませんでしたが、SPD−SLはそこら辺が改善されています。
そして上左の写真ですが、黄色いのがフローティングクリート、赤いのが固定モードクリートです。装着状態を見るとわかりますが、黄色いクリートを装着しているときには前端部も動きます。SPDやSPD−Rでは”前端を軸に”クリートが動く感じがしましたが、SPD−SLは前端部も適度に動く感じになりより自然に感じられました。TIMEほどグニャグニャ動くわけでもないので(でもTIME派の方々はこれが良いようですね)自然に感じられました。
右上写真を見ればわかると思いますが、クリートはLOOKタイプの装着方法です。よってほとんどのシューズに装着可能です。
2002ツール・ド・フランスでまたしても勝利を収めたランス・アームストロングはSPD−SLを使用していました。
昨年ある雑誌にアームストロングはPD−7401(デュラエースのビンディングだけどLOOKクリート)を使用しているなんて書かれていましたが、実はSPD−SLの先行開発だったんですね。
なお発売は12月上旬の予定(あくまでも予定です!)とのこと。

カプレオ

カプレオのスプロケカプレオのハブ

ブームという言葉を通り越して、今や一つのジャンルとして確立した感さえある小径車ですが、小径故くるくるクランクを回さないとならないというジレンマに陥っておりました。ちょっとマニアな方々は変速性が劣るのは仕方なくチェーンリングを大径化してギア比を稼いでいました。が、もう大丈夫。シマノがやってくれました。小径車専用としてリアのスプロケットを9Tから組めるカプレオをリリースしてくれました。
スプロケの歯数が少なくなると、チェーンは丸ではなく多角形を描くようになりスムースなペダリングができなくなると言われておりました。が、ついにシマノからでましたね。
先日のルイガノのショーでカプレオが装着された小径車があったのですが、クランクを回して変速を試してみたところ(漕ぐことはできなかった)結構スムースにペダリングも変速もできました。
さすがに9Tともなるとハブも専用で右上写真のようになります。
これでモールトンも高価なHOPE社のハブを使用して組む必要がなくなります。もっともモールトンはフレームが高価なのであまり金額に影響を与えないかも....
なお、フロントのクランクも専用品があり45Tだそうです。ん〜、これじゃあんまり意味ない....ま、9段ですから9段用のチェーンリングが使用できると思われます。用途を広げればDH用としても使える??
蛇足ですが、弊店のクラブ員KMGT氏のモールトンSPEEDは65Tチェーンリングに9Tトップで組んでおります。鈴鹿スペシャルです。シマノ鈴鹿ロードの下り直線で小さな赤い自転車に抜かれた記憶のある方もいるのでは??

その他通勤スペシャルとして評判の高いクイック仕様ハブダイナモにディスクブレーキ仕様そしてローラーブレーキ仕様が追加されました。
ローラーブレーキとは既に多くの一般車のリアブレーキ(低価格車を除く)に採用されている音鳴りしづらく耐久性の高い高性能ブレーキです。軽いレバー操作で抜群の効きを発揮する優れたブレーキで、これをフロントにも採用という動きが出てきています。
と言うのも、ディスクブレーキのように車輪の真ん中あたりに装着されるブレーキですので、雨などにあまり影響を受けないので、雨天などでも自転車を使用される方にうってつけのブレーキなのです。車輪も汚れないですし。
と言うわけで、日々自転車を活用されている方には是非ともおすすめしたい一品です。が、安物には付いていませんのであしからず。



さて、ここまで読んでくれたあなた、ありがとうございます。専門用語やわからない表現などが出てきてお疲れになったのでは?でもね、これをまとめた私はもっと疲れているのです。
疲れたついでに下記でも読んでいただければこれまた幸いです。(ナンカビールモハイッテイルシ、イキオイデカキツヅケチャイマス)

XTR開発裏話
XTRと言えばシマノの原さん。開発裏話を聞きました。
960系XTRの開発に当たり、アメリカで市場調査をしたそうな。次期XTRに求めるものは?という質問に対し一番反響のあったのが”軽量化”だったそうです。そりゃそうでしょうね。
アメリカのある販売店に出向いたときにそこの方が現行XTRに関して感想を述べたそうな。性能は素晴らしい。でもそれだけと。そしておもむろにKINGのヘッドパーツを取り出して言ったそうです。「このヘッドパーツは性能もさることながら見栄えも良いんだ。アートなんだ」と。
この言葉はかなり原氏を揺さぶった一言だったそうです。そこで今度のXTRでは所有する喜びを感じられるような物にしようということになったそうです。そこで960系XTRでは”筋肉”のような力あふれる美しい曲線をモチーフにバフ仕上げされることになりました。特にバフに関しては、大阪で作られたXTRをわざわざ山口県の工場まで運んでバフ仕上げをし、その後また大阪まで運んで最終仕上げやアルマイト加工をすると言うことでした。実際バフの終わった状態では、顔が写るくらいにビカビカだそうです。
またニューXTRが軽くなったり美しくなったりしてもそれだけではインパクトが弱い、これぞニューXTRと思えるモノが欲しかったそうです。そこでデュアルコントロールレバー採用というアイデアが生まれました。デュアルコントロールレバーならハンドルのどこを握っていてもシフト操作できるということだからです。
ところがロードレーサーと違ってレバーが水平に付くこととMTBであるからしてオフロードを走るわけ故にレバーが上下に揺さぶられ、勝手に変速されないように工夫する必要がありました。
また、XTRである以上その”操作感”も最高の物を求められました。ここでヒントになったのは自動車のウインカーレバーだそうです。で、色々な自動車を試乗しては操作感を”数値化”し、最良と思える3台の車のウインカーレバーをバラして構造を研究したそうです。
またディスクブレーキの開発についてですが、数年前スカンクチーム(シマノ契約の超一流ライダー達によるテスト)がダウンヒルにおいてツインローター、トリプルパッド、水冷による冷却機構を持ったディスクブレーキを使用していたのを覚えている方もいらっしゃるかと思われます。これはディスクブレーキならとにかく超強力な物であればよいのか?という疑問からテストされたそうです。
ツインローターディスク説明
が、写真に書いてある説明の通り効けばいいってもんじゃないということがわかったと言うことです。当時あまりにも効きすぎたために、ライダー達はローターにオイルを塗っていた程だったそうです。

と言うことで期待したいニューXTRです。が、もっと期待しちゃうのが次期デュラエース。そろそろフルモデルチェンジしてもよさそうな次期?ですが、これに関してもリクエストをしました。対カンパで考えると、性能はデュラエースでも所有した際に得られる満足度はカンパニョーロのほうが高いような気がします。生産が人件費の安い海外に流れてしまっている昨今、またブランドと言うイメージでは歴史の長いヨーロッパに苦戦している我がニッポンですが、MADE IN JAPANだからこそ、じゃなきゃできないものを期待したいところです。シマノ製品は性能的にはMADE IN JAPANを十分に感じさせる素晴らしい物ですが、それだけではいづれコピーされてしまいそう。よって”匠”を取り入れて欲しいものです。日本には世界に誇れる日本の歴史があります、”デュラエース漆”とか”デュラエース七宝焼きバージョン”なんてのもありでは??等と半分本気半分冗談でお話ししました。またしてもショー終了の最後までおじゃましてしまいました。

最後にニューXTRについて操作感など色々書きましたが、あくまでも私個人の主観であって、更に”スタンドにかけられた”試乗車でのほんの短時間の感想です。トレーナーにかけられている(負荷はかかっていない)バイクでしたのでただクルクル回すしかなく、コギを入れたりダンシングしたりなどはできない状態です。
実際デュアルコントロールレバーに関しては慣れれば操作感は問題なく、かえって操作する頻度が増える(ライダーは本当はそれだけ操作したかったということ)ということです。
なお960系ニューXTRはXCをターゲットにしたモデルです。文中にも書きましたがmrpの装着はできませんし、シフトレバーのみの単体販売はありません。よって、XTRパーツで下り系バイクを作りたい方は”あるうちに”現行XTRパーツをゲットしておく必要ありと考えます。

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