整備日誌    2001年10月編

2001年10月1日
サスペンションの話の続き
wavewasherオイルを抜いて中の部品を外そうとしたら....もっと奥にあるべき部品が出てきました。それも真っ二つに割れて。げ〜、マジかよ?もう一個の破片は排出したオイルの中から探し出した。このフォークは以前バラしたことがあるフォークです。組み間違え?いや、MANIAは何度もバラしているし、このパーツの機能をよーく考えるとまさかこんなところに入れるはずはない。まぁなってしまった物はしょうがないとして、もしや?と思い右フォークもバラしてみると案の定というかこっちも折損していました。しかも4分割....
しかし出てきたのはその中の1/4、残りはどこかなと思い排出したオイルを見ても見つかりません。排出したオイルはとてもきれいで金属粉なども見られなかったことから絶対どこかにあるはず。知らんぷりはもちろんできません。結局、位置依存減衰特性を司るプログラムシャフトのオリフィスの中にうずくまっておりました。引っぱり出すのに苦労した....
作動頻度や変形量を考えると使用過程において折損に至る可能性は結構ありそうな気がします。なお、このフォークは2シーズン半使用した物でした。
ま、もちろんKOWAさんですからこういった小さな部品も出荷していただきちゃんと直りました。


2001年10月6日
ロードマンINGKさんから、先日お買いあげいただいたリッチーロードロジックペダルの回転が重いと言われ確認するたベアリングリッチーロードロジックペダルめにバラしてみました。オーバーホールするにはダストキャップがありこれを外さなければならないのですが、これが異様に長く奥深くはまりこんでいて外すのに苦労しました。で、ようやく外れたら今度はナットを外します。が、これが結構奥にあって、しかもここの内径が小さいのでソケットレンチが入りません。で、工具入手にしばし時間がかかる。
ようやく工具をゲットしてバラすとシャフトが外れます。シャフトにはちょっと汚れが見られしかも若干焼けたような跡があります。
で、驚いたのはベアリングにニードルローラーベアリングを使用していたことです。ニードルローラーベアリングは耐荷重性が高いというのが特徴なのですが、シャフトの精度が要求され、また汚れに弱いというデメリットもあります。更にスラスト方向の位置決めの必要もあります。
でわかりました、ダストキャップがあんなに深く奥行きがあるのは汚れの侵入対策だったわけですね。またスラスト方向の位置決めは、半透明の薄いエラストマーのような物でプリロードをかけて行っています。これなら重量も軽いし一石二鳥です。
シャフトラッピング後で、なんでニードルローラーベアリングを使用しているかというとロープロファイル化のためと思われます。ニードルローラーベアリングは耐荷重性が高いためにベアリングの直径を小さくできます。それにより軸と踏面の距離が縮まりダイレクト感のあるペダリングができます。そういえばデュラエースペダルもニードルローラーベアリングを使用(併用)しています。
と一通り感心した後にシャフトをラッピングしてから組み込みます。少しでも回転抵抗を少なくするために、ちょう度(粘度)の低いグリスを使用して組み付けました。が、やはり接触面積の大きさからか抵抗はちょっと大きめではあります。
それにしてもたった一個のペダルでこんなにも楽しませていただいて、さすがはリッチーLogic(理論)です。

2001年10月9日
〜振れ取り台〜
振れ取り台当店には当店より歴史の古い工具がある。右の振れ取り台です。当店オープンの際どこかの自転車屋さんから譲り受けた物らしい。見ての通り”いかにも”古そうです。戦争知ってそうです。そんなわけないか。鉄は貴重だったから。
いかにも古臭く重そう(実際鋳物だからとっても重い)で、見ようによっては「こんな古臭いやつでちゃんとした仕事できるのか?」と思われてしまうかもしれないような物です。
が、ちゃんとしたホイールを組もうとするとこいつじゃなきゃダメなんです。
当店にはもう一つ振れ取り台があります。外国の有名メーカーでよく雑誌等で見かけます。しかしこいつだと精度の高いホイールを組むことはできません。その理由は剛性です。
重い鋳物と鉄板のプレス品、この違いです。
振れ取りをやっている時に振れ取り台が剛性不足で逃げては困ります。また、振れ取り台への取り付け方法も異なり、場合によってはこの外国製品は具合の悪いこともあります。が、もちろん優れているところもあるので、初めは外国製を使用し、仕上げは鋳物君で行います。
今はもう売ってないから大事に使わなきゃ。

2001年10月22日
〜ワイヤー式ディスクブレーキ〜
ここ最近のMTBのトレンドはディスクブレーキです。ディスクブレーキには大きくわけて油圧式と機械式の2タイプがあります。一般的には油圧式はメンテが面倒で機械式のほうが楽と言われておりますが、一概にそうとも言えません。
ディスクブレーキに限らず一般的にブレーキでメンテする事ってなんでしょうか?おそらくブレーキレバーの引きしろとパッドの摩耗チェックくらいだと思われます。そう考えると実は油圧式のほうが楽だったりします。もちろんそれ以上のメンテ(エア抜き、フルード交換、オーバーホール)を行おうとすると油圧は面倒ですが、そんなのは自転車屋さん任せにしてしまえばよいのではないでしょうか。
ほとんどの油圧ディスク(厳密には油ではないんですけどね。一般的だから油圧と書きます)はパッドのクリアランス調整は自動です。ブレーキを使用することによりパッドが摩耗するわけですが、摩耗した分だけ自動的にパッドがせり出してくるのでいつもブレーキレバーの引き代は一定です。
これに対しワイヤー式は摩耗にあわせ自分で調整しなければなりません。しかもほとんどのワイヤー式は片側だけのパッドを動かします。反対側のパッドは動きません。
ブレーキレバーを握ることにより”片側”のパッドもしくはキャリパーがせり出しそしてローターに当たります。するとローターは押されてたわみ、反対側のパッドに当たって制動力が発揮されます。
全くメンテをしないとパッドが減ると遊びが増えるだけでなく、ローターをたわませる量も増えるのであまり気分良くありません。また、パッドが減ったからと言って普通のブレーキのようにワイヤーを引っぱるのは好ましくありません。なぜならば、ワイヤーディスクはカンチブレーキやVブレーキに比べキャリパーピストンの動く量が多くなります。ピストンはもちろんスプリングで元の位置に戻されるわけですが、作動量が大きい故にスプリングもたくさん引っぱられます。ワイヤーを引くと言うことはスプリングをもっと引っぱることになるのでレバーが重くなりますし、もっと深刻なのがスプリングが外れてしまう可能性があると言うことです。
ではどうするか?動かない側のパッドは工具で位置調整できるようになっているのでローターに当たるギリギリまでせり出します。そしてキャリパーの位置を適度なブレーキレバー引きしろになるように動かします。
もしくは物によってはキャリパーの位置をダイヤルによって調整するタイプもあります。
なるべくローターに擦らない程度に寄せ、しかも引き代を適度に調整しなければなりません。う〜ん、面倒です。
問題なのは自転車店がこういうことを知っているかということです。説明書には書いてあるのですが英語ですし....それと物によりやり方が違うというのが問題です。私だって全ての物を知っているわけではありませんから。

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