整備日誌 2001年11月編
2001年11月10日
当店には色々な自転車にお乗りのお客様が来られます。一般車はもちろんのこと、ロード、ツーリング車、小径車、MTB、BMX、トライアル等々。自転車に対する趣味は同じものの、好みとする方向は皆さん色々とあります。
さて、そんな中でこの整備日誌にネタを提供していただけるのはやはりMTB系が多いです。中でもDH系。なんとなく想像付くと思います。が、ゆっくり走ってもそれなりの使い方をすればそれなりに逝ってしまうことはあります。でもそういうバイクなのだからそれなりに使っていただいた方がいいとは思いますが。
さて、本日のネタ提供者はMTBによるトライアルを特訓中のSTRさん。元オートバイトライアル国際B級選手です。が、自転車によるトライアルはなかなか勝手が違うとのこと。猛特訓の成果が自転車に現れています??ヘッドパーツ割れてます。見事に割れてます。前回HSMT氏のDHバイクのフォーク交換の時と同じように割れてます。トラ車はサスペンションもないですから衝撃がダイレクトに伝わるからしょうがないのかな?
話逸れますが、本日TKGK君がAOK君から譲り受けたフレーム(普通のMTB)を見ていたら、ヘッドチューブ歪んでました(^^ゞ やつはこれでヘッドチューブ歪ませたの2台目。まったく....
と、書いていたら昨日AOK君がセカンドバイクを持ってきたのを思い出しました。なんでもリアサスペンションがスカスカとのこと。押してみると見事にバネの反力で一気に「スカン」と戻ります(^^; ショック抜けてます。なんでも、道路沿いにある斜面を登っていって道路に飛び降りていたとのこと。だんだん上達していってどんどん上から飛び降りるようになれたとのこと。ある時突然リアユニットが抜けたそうです。そりゃそうだろう。しかもこのバイク、フレームの補強部にクラック入っていたんですよね。以前彼がやったそうです。で、今回よく見たらスイングアームのピボット部にもクラック発見しました。まったく....
ついでだから書いちゃいますが、DH仲間ではやはり他人のバイクは気になるもので乗ってはみたいものの、そうすると自分のバイクをAOK君に貸すことになり「それはリスクが高い」と皆さん申しております。
さて話戻ってSTR氏のトラ車、リムも割れてます(^^; ある程度予想はしていたのですが....
で、リムのお話。リムは丸くなっています。これは真っ直ぐな線材をクルリと曲げて丸くするわけですが、曲げたら繋がなくてはなりません。上級モデルでは溶接して繋ぎますが、中下級グレードでは棒材とかスリーブを入れてパチンとかしめて繋ぎます。どちらが頑丈かといえばもちろん溶接リム。かしめの物では(ハードに扱うと)右のようにつなぎ目から割れてきてしまいます。過去にこの手の物は何本か見てきました。けど、ハードに扱わないのであれば全く問題はありません。しかし今回はもちろん溶接リムで組み直しました。
ついでに思い出しました。昨日AOK君DHバイクのホイールも持ってきました。
AOK : 「スポークが緩んでるんですよ〜」
私 : 「だからぁ、これはリム打ちしてるからそこのテンション低くなっちゃってるんだよね。ニップルが緩んだというよりも、リム打ちしちゃったからリムがへこんでテンション取れなくなっちゃってるんだよね」
AOK : 「でも組んでからそんなに日にちも経ってないんですよ〜」
私 : 「だからぁ、日数じゃないの、乗り方なの」
AOK : 「........」
彼は色々とネタを提供してくれるので大変ありがたい人材です。しかしテクニック上達しているし、どんどん速くなっているし、うまいんだよなー。今後は壊さす、より一層の速さを身につけてもらいたいものです。が、ネタは提供して欲しいなー。
2001年11月11日
ふと思ったのですが、今年はXTによるトラブルが多かったようです。転倒によるFC-M751の曲がり2件(DH)、RD-M750のPテンションスプリング折損3件(DH)、Bテンションスプリング折損1件(山サイ)等々。
XTRって一気に高くなるので、そこそこハードに扱われる方達は信頼性と値段とのバランスを考えてXTを使用される方が多いです。が、このような状況でした。たまたま運が悪かったのか?それともサンプル数が多いからなのかはっきりはしませんが、XTRユーザーにはなにも不具合は起こりませんでした。ので、XTRユーザーの方々は「やっぱXTRじゃなきゃね〜」とXTユーザーの方を煽っております。
等と言っている私はDH君はエアラインズ、通勤君はXTRでクロカンレースも出たけどノートラブル、試乗車君はLXでノートラブル。運でしょうか?
2001年11月27日
お客様からトライアスロン車のオーバーホールを頼まれました。お預かり時お客様からは特に不具合はなく一般的なグリスアップでいいと依頼を受けたのですが、どうにもハンドルが重いです。ちょっと不自然です。一応これも見ておくとお話しして作業開始しました。
まずはハブ。
一つ前の型のアルテグラ FH-6402 です。写真の通り悪くない状態です。水分の侵入による白濁化も見られません。ベアリング、玉押し、玉受け共に異常有りません。グリスがデュラエース色ではありませんが、どうやらTRI-FLOWのようです?
フロントハブも同様な状態でした。
次にヘッドパーツです。
こちらはちょっと錆びています。上ベアリングには錆が、下ベアリングには若干の砂噛みが見られます。決してコンディションの良い状態とは言えないですが、世の中にはもっと凄い状態で酷使されている物もあるので、驚く程ではありません。これがハンドルを重くしていた原因なのかな?と思ったのですが、なんか腑に落ちない。
と言うのも、ゴリゴリ感があるのではなく明らかにフリクションと感じさせる重さだったからです。うむむむ....と考えつつ、ワンをよーく見てみると....
なんと上ワンの内側にフォークのネジ部が当たった跡があります。しかも抜いたフォークにも下ワンの内側と干渉した形跡が見られます。これじゃハンドリングが重くてもしょうがないでしょう。これはフレームに対しフォークが斜めに入っていたから起こったことです。
しかし....こんな状態でお客様にお渡しするか??(当店で販売した自転車ではありません)
この自転車、某有名国内ビルダーの自転車です。でもビルダーさんはフレームを制作しているだけで、組み立てるのは自転車店のお仕事です。で、この責任はどちらにあるのか?なのですが、聞くところの話によるとヨーロッパではフレームビルダーはあくまでもフレームを制作するだけであり、この手の修正作業は自転車店のやるべき仕事とのことです。
実際、彼の地のフレーム(特にちょっと昔のクロモリ系など)は買ってきたままではシートポストさえ入らず、リーマー仕上げしなくてはならないことなど日常茶飯事ですから。でもしっかり組み上げるとこれがいい乗り味だったりするんですよねー。
さて、原因が分かったところでもちろん対策をします。ワンを外してみると案の定ヘッドパイプの研削作業は行われておりませんでした。ので、研削作業によりヘッドパイプの平行を出します。これで組み立てたらハンドリングの妙なクセは全くなく、非常に乗りやすいバイクになりました。
めでたし、めでたし。