整備日誌    2004年2〜3月編

2月17日
またしても久々の書き込みです。今回もネタがなかったわけではないのですが、後回し後回しにしているうちに書きそびれてしまいました。おかげでせっかくのネタも忘れてしまったり....
さて、そんな久々を飾るにふさわしい?ネタ(と言っても実は作業したのは昨年だったりする)の公開。
KT氏からどうもホイールの具合が良くないということで入院となりました。
バキッと音がした、チェーンがたるんじゃう等々の症状とのこと。
フリーを回すとゴーゴーと勇ましい音がするのでまずはバラす。んだけど、メーカーによってバラしかたって結構違ったりするんですよね。で、これもシマノではない。このメーカーのハブはちょっと特殊なサイズのレンチを使用して脱着することを思い出し作業するもサイズが合わない。実は一般的なサイズだったのですが過去の物と取付方法が違ったりしました。
さて、そんなこんなでフリーを外すと右写真のよう。
ははは、フリーが錆びています。思いっきり錆色です。で、なんか薄い”いびつな”形をしたワッシャーみたいなものが入っていたりします。
第一印象はそんな感じでした。しかしこのあとに、まさかそんな風になっていたとは思いもせずに。

2月18日
とりあえず上記のフリーでは具合良くなかろうと思い、フリーの在庫があるか扱い元に確認したところOKとのこと。しかしどうも話がうまくかみ合わない。話は通じているようだけど、どうにも細かいパーツの寸法やら装着方法やらが実際バラした物とは違うように電話口では受け取れる。先方では大丈夫と言うけれど....
大変不安だったので上記写真をメールで送り、上記一式が欲しいと伝えました。ら、
「なんですかこれ?、すごい壊れ方していますねぇ。こうやって外れるの初めて見ました」と言われてしまった。ま、それでもフリーはあるから大丈夫と言われたけれどなんか不安。それならと言うことで各部の寸法を測ってもらったら(よくぞやってくれました)、フリーを留めるボルトの長さが違う。今回のクランケの方が短い。
しかし先方は「十分にフリーをハブに留めるだけの長さはあるから問題ないでしょう、ハブ側の雌ねじがあまるだけですよね」と。
「いやいや、雌ねじが切ってあるのはフリーの方であって、ハブにはネジは切ってないよ」と私。
「そんなはずはない。ボルトはフリーを通ってハブに留めるんでしょ」と先方。
「いやいや、ボルトはハブを通ってフリーに留める」と私。
もう一度写真をよく見てくれと伝えたところ納得してもらえました。
で、「USに(made in usa製品です)確認してみる」ということで、待つこと2日くらい、「たしかにそういうのあるようです」という返事をもらう。と言うかそういうのがここにあるんだけど....。ちょうどランニングチェンジがあった頃の製品のようで、たまたまJAPAN側が気付かなかったようです。
残念ながらパーツの手配にはちょっと時間がかかるということで作業は止まってしまったのですが、これでは何が原因だかはっきりせず、イマイチ納得がいかない。ので、スケベ心で色々と見回すと....マタシテモヒッパル

2月20日
ハブ側に残った方を見てみると、まず目に付くのが茶色いベアリング。これじゃいかにも不具合って感じです。そして手前に小さなベアリングが見えます。が、ちょっと数が少なく配置も不均一。更にベアリングの外周の土手と言ってよいのでしょうか、そこが部分部分崩れています。
更に写真には写っておりませんが、フリーの内側は随分とグレイがかったグリスが入っておりました。
もう気付かれたかもしれません、この土手が崩れてベアリングが出てきちゃって、すりこぎのようにグリグリこすられてグリスに混ざったから、やたらにグレイのグリスになっていたのでしょう。だから異音がしたわけだし、フリーが正常に働かなかったのでしょう。

3月8日

今回のクランケは04モデルのロックショックス パイロットSL。普及価格帯のサスペンションがどのような構造になっているのか、ある意味興味はありました。
普及価格帯とは言え、ちょっと前のサスペンションなどに比べるとスペック的にもなかなかに魅力的になってきておりますのでこれまた興味津々。
今回は特に不具合があったからバラしたのではなく、購入されたYSDさんから「ロングストロークで組んでおいて」と言われたのでロング状態にするための作業を行いました。
ご存じの方も多いと思われますが、パイロットSLは(バラス必要はあるものの)ストロークを80ミリもしくは100ミリに変更することができます。
で、結論から言っちゃうと既にロングストローク状態だったというオチ。無駄な?仕事をしてしまった?
とは言うものの、意外やしっかりした中身でした。まあもちろんサイロの一部やSIDなどに使用されているPURE DAMPER採用モデルとは根本的に違いますが、単なる穴の開いたオリフィスだけのダンパーではなく、枚数は少ないながらもリーフバルブを使用した本格的な?ダンパーではありました。
蛇足ながらロックショックス、04モデルになってから非常に動きがスムースになった気がします。まだ馴染んでいない状態でも非常にスムースな動きをします。

3月16日
今度のクランケはマニトウ。ロックショックスのサイロの対抗機種として発売されたブラックのエリートです。
ま、その後マニトウからはシャーマンやらミニットやら出てきて、一体何がなんだかわかりづらくなってきたというのはありますが。

さてブラック、まずはダンパーを見ていきましょう。
マニトウではTwin Piston Chamberと呼んでいるダンパー形式です。
写真の下の方に写っているのがリバウンドダンパーでアウターチューブ側に取り付けられます。上に写っているのがコンプレッションダンパーでインナーチューブの上端に取り付けられます。Twin Pistonだからコンプレッションとリバウンド各々に減衰力発生バルブがあるわけです。
安いダンパーはコンプレッションもリバウンドも一つのバルブで済ませちゃう物もある中で、TPCはコンプレッションとリバウンドのダンパーを分けています。よってコンプレッション側に求められる性能とリバウンド側に求められる性能を各々でセッティングできます。ついでながら別々の構造と言うことは追従性にも優れます。
と言うのも、サスペンションは伸びたり縮んだりするその瞬間は動く方向が逆になり、その一瞬(本当に一瞬)は動きが止まるわけです。当然オイルも瞬間的に逆方向に流れるわけで、その瞬間は減衰力を発生しないわけです。
もっと厳密に言うと、瞬間でオイルの流れは変わるわけではなく、ゆっくりと減速しつつ瞬間的に止まり向きを変えて加速しながらとなるわけで、流れがゆっくりの時には減衰力は発生しづらいわけで、よって瞬間と言うよりはもうちょっと長い時間減衰力は発生しづらいわけです。
一つのバルブでコンプレッション、リバウンドを共用しているタイプですと、これら一連の動作をたった一つのバルブで行うわけで、減衰力の発生しづらい時間が長くなりがちです。
しかしコンプレッションとリバウンドを別々に分けているタイプですと、コンプはリバウンド時、リバウンドはコンプ時のオイル流れはキャンセルされており、求められる方向にのみ減衰力が発生しますので減衰の追従性は良いわけです。
と言うわけで次回に続く。

3月18日
更にこのダンパーはリーフバルブを使用したダンパーになっています。安いダンパー等は簡単に作るために単なるオリフィス(穴)+ちょっとしたバルブ程度で済ませちゃう所もありますが、ここでも理想のセッティングと追従性を求めるとリーフバルブタイプになってきます。リーフバルブならその径や枚数を変えることで、より理想に近い物に仕上げることができます。
と言うわけで、なかなかに感心させられるダンパーではあります。これで5万円台(だったけ?)だから価格から見ても魅力的です。
構造的にはロックショックスのPURE DAMPERと似たような物ですが、あちらは油で満たされたカートリッジタイプのダンパー。メンテやちょっとしたセッティングはマニトウのTPCのほうがやりやすいかもしれないけれど、性能的にはPURE DAMPERの方が安定しているかな??

3月25日

ロング状態 ショート状態

さてもう一つの大きな特徴、可変トラベル。
ロックショックスがグリグリダイアルを回してストローク調整するのに対し、マニトウはスイッチ一つのワンタッチ。好みのストローク量にするのならロックショックスかもしれないけどワンタッチでストローク変更できるのはマニトウの強み。
しかししかし、この2メーカーにはストローク調整機構についての思想に大きな違いがあるのです。
ではまずマニトウを理解していきましょう。
上記写真ですが、これがマニトウの可変ストローク機構(Rapid Travel Adjust)です。
簡単に説明しますと、写真上部に写っているのが当然ながらメインとなるスプリング。これの下端が下の黒い部品の右側にある皿状の部分に乗っかります。その左には更にスプリングがあって、そのまた左にはインナーチューブの下端にねじ込む部分があります。
さて、まずはロング状態。
メインスプリングは写真の下の方に写っているロッドの右端のお皿でとまります。ここで止まるってことは、その左側にある小さなスプリングはコンプレッション側には何も作用していないわけであり、これはボトムアウト防止のためのリバウンド側のスプリングと言うことになります。そしてそのまた左の黒いやつがインナーチューブ下端にねじ込まれるわけですからこの位置がインナーチューブ下端位置となります。
次にショート位置。
この場合ロッド右端の皿の少し下に羽状の物が飛び出してきます。飛び出すことによりボトムアウト防止スプリングが右側(装着状態では上側)には行けなくなり、左側(下側)に固定されます。と言うことはインナーチューブにはめ込むパーツの位置が更に左側(下側)になるってことで、すなわちインナーをアウターに引き寄せることになります。こうやってストロークを短縮しています。
ま、自動車用のありがちな車高調と同じ構造と言えばわかる人にはわかるかも。
さて、次回はロックショックスのU-TURNを解説できると思います。上記で書きましたが、マニトウとロックショックスでは可変ストロークに対する考え方が違います。それとも特許などに触れないようになのかな????


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