整備日誌    2004年4月編

ロング状態 ショート状態

4月12日
ご期待にお応えして?今回は前回に引き続き可変トラベル。ロックショックスのU-TURNについてです。
ロックショックスのU-TURNはマニトウのRTAのようにワンタッチでストローク調整をするのではなく、トップキャップに付くダイアルをグリグリ回してストロークを調整します。ダイアルはスプリングの片端にはまっており、反対側は写真のようにアウターチューブ下部に取り付けられるシャフトの片端に入り込んでいます。この部分はちょうどスプリングのピッチと同じように作られており、ダイアルを回すとスプリングはこの部品に沿って動いていきます。沿って動くことによりスプリング(インナーチューブ)が引き寄せられたり、遠ざかったりしてストロークが変わります。
ここでマニトウのRTAとの大きな違いは、マニトウではストロークの変化はプリロードの変化なのに対し、U-TURNは巻数の変化になるということです。巻数が変わると言うことはバネ定数が変わることでもあります。
ここでなぜトラベルアジャストが欲しいかを考えてみましょう。
登りではパワーロスを少なくするために、なるべくサスペンションに無駄な動きをさせず、しかし下りでは十分に動いて欲しい。そのために登りではショートストロークに、下りではロングストロークに簡単にできるのがマニトウやロックショックスのトラベルアジャストシステムです。しかしながらそのシステムは上記に書きましたようにマニトウはプリロードを、ロックショックスは巻数(レート)を変えることで実現しています。

プリロードが変わるということは、初期の動きが硬くなると言うことでもあります。が、レートは変わらないのでショートストローク状態であろうがロングストローク状態であろうが同じ大きさの衝撃を受けたときに沈む量は同じです。
わかりやすく説明しますと、100キロの衝撃を受けたときに50ミリ沈むスプリングの場合、50キロのライダーが乗車するだけで25ミリ沈む(プリロードがかかる)わけで、すなわちこれが1G’状態。
ここで100キロの衝撃が加わったとすると50ミリ沈むわけだからトータルで75ミリ沈むということになります。
以上をロングストローク状態としましょう。では、ショートストローク状態だとどうなるかというと、RTAでロング100ミリがショート80ミリになったとしましょう、ショートにするだけですでに20ミリ(40キロ)のプリロードがかかります。ってことは、50キロのライダーが乗車しても25−20=5ミリしか1G’では沈まないことになります。が、100キロの衝撃が入力されると、レートは変わらないことからやはり50ミリ沈むわけです。よって5+50=トータルで55ミリ沈みます。
と言うわけで一見硬くなったように思えるけど、実は初期の沈み量が少ないだけで以降の硬さは変わらないということになります。

それに対しロックショックスは巻数が変わるので、ショートストローク状態の時にはレートが高く、ロングストローク状態の時にはレートが低くなります。
これまたわかりやすく説明すると、ロング状態で....ってのは上記の説明と同じで、50キロのライダーが乗車すれば1G’は25ミリとなります。
ショートストローク状態では有効巻数が減りバネ定数が上がるので100キロで50ミリ沈むスプリングが100キロで40ミリ沈むようになると仮定します。と、1G’では20ミリ沈むことになります。
では100キロの衝撃が加わった場合、1G’の20ミリ+40ミリ=60ミリ沈むことになります。沈み量だけで評価すると、むやみに動いて欲しくないショートストローク状態ではマニトウタイプの55ミリに対し、ロックショックスは60o沈むことになりこの時点ではマニトウタイプの方が良さそうに思えますが、もっと大きな衝撃が加わると両者はいつしか逆転します。ので、ロックショックスタイプの方が優れていると私は考えます。
が、フルボトム近辺ではロックショックスタイプの方が硬くなり良いのかもしれませんが、コギなどで使う領域では上記の例では(と言ってもレートも衝撃も体重も計算しやすいように仮定しただけなので、実際にはどれくらいになるのかわかりませんが)マニトウの方が動く量が少ないので良いようにも思えます。実際にマニトウの方がショートストローク状態にしたときに硬くなるように感じるし。それにスプリングの交換作業はマニトウは簡単にできるけど、ロックショックスはサスペンションをある程度バラさないと交換できないのはちょっと面倒。
ま、どちらもどちらか。そのうちにプリロード調整+可変レートなんてやつが出てくるかも。またしてもセッティングに悩んじゃうかも。
と言うわけでご理解いただけたでしょうか?

なお初年度モデルのU-RURNは今回紹介したようなシステムとは異なり、ダイアル外して、スプリング抜いて、底にあるお皿をすごく長いマイナスドライバーで回すことでスプリングが乗っかるお皿の位置を変えていたという、言うなればマニトウのRTAを不便にしたようなシステムでした。このタイプでは当然ながらプリロード調整でのストローク調整となります。が、バージョンアップ用のレトロフィットキットなんてやつを入れれば、最新のU-TURNと同じ機能になります。

4月20日
ちょっと面白いお話を聞きましたので今回はこれをネタに。
メーカーにもよりますが、中級グレード以上のサスペンションにはマグネシウムアウターレッグが採用されているのをご存じですか?
マグネシウムは実用金属の中で一番軽いというメリットがあるものの、酸化されやすいというデメリットもあります。その酸化のされ方がハンパじゃなく、ボロボロと崩れていく....というのをご存じの方もいるはず。
が、当然ロワーレッグにはそれなりの腐食処理などがされており、一般的な使用状況では特に問題は起こりません、外側は。
なに?外側はって。じゃあ内側は?
通常サスペンションはオイルシールなどでしっかりしたシーリングがされているので水や泥が中に入ったりすることはありませんが、高圧洗浄機などを使用した場合はこの限りではありません。ってのは、この整備日誌を過去からずーっと読んでいただけた方には十分ご理解いただいているはず。
いくらしっかりとしたシーリングがされていようとも高圧洗浄機の洗礼にあってはつらいようで、アウターレッグ内部に水分が侵入することもあるそうです。
特に腐食処理のされていないアウターチューブ内側に水分が入ると....やっぱ当然ながら内部から腐食は始まっていくわけで、そうすると最悪の場合、アウターチューブの破断にまでなりかねない事態も起こりうるということです。
ので、やはり高圧洗浄機の使用は控えましょう。そしてメンテはしっかりおこないましょう。

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