整備日誌 2004年11月編
11月7日
久々の書き込み。ネタにする仕事がなかったわけではないのですが、なんか書かなくなると書くタイミングをなくすというか何というか・・・・
で、久々の書き込みとなったのでここはそれなりの内容を。というか一部の方をドキッとさせてみますか。
さ、ロックショックスユーザーの方よーく読んでね。
というわけでお預かりしたのはロックショックスSID。購入されて3年くらいたったでしょうか、特に悪いところもないので、まぁメンテナンスしといてねということでお預かりしました、この時は(^^ゞ
まぁSIDでは沈み込んじゃって戻らないとか、伸びちゃうとか、オイルが漏れるとか、ロックアウトができないだとか、まあそういうことが起こり得るといえば起こり得ます。けど今回のクランケ君はそのような状況は無し。
ではバラしに入ります。
排出したオイル。こういうのは初めて見ました。 ロックショックスのオイルはもうちょっと透明に近いのですが少し飴色に色づいております。 それより2つの透明、何だかわかりますか? そう、水です。水が入っていました。 通常水はオイルに混入して白濁化するんですけどね、これは分離していますね。まあどうであれ水の混入が認められるということです。 この時点ではまだ完璧にバラしていない状態です。オイルもインナーとアウターの潤滑用のオイルを排出しただけです。SIDはピュアダンパーという、高級なショックアブソーバーが右レッグに内蔵されております。まだそれはバラしていない状態です。で、この水は主に右レッグから排出されました。と言うことは… |
これはアウターの一番上に乗っているダストシールの下にあるフォームリングというやつ。フォームリングというといかにも”らしい”名前ですが、要はスポンジ。これにオイルを含ませることで摺動部の潤滑を助けています。 ま、それはよいとして、左と右でかなり形状が変わっております。左が正常な状態で右が異常な状態です。サスペンションが摺動している間に挟まれて伸びてしまったのか?? こういう状態になっているのも初めて見ました。 |
これはデュアルエア側をバラした状態。特に異常はありませんでした。 しかしポジティブとネガティブのエア室を区切り、エアを漏らさずに保っているのはO−リングのおかげ。ハイプレッシャーであり、なおかつ高速で上下に摺動するもの(ずいぶん高温になると思われる)をゴムで仕切っているわけですから、それなりの消耗は起きます。ここは定期交換部品ですので交換です。 |
左レッグ、デュアルエア側のアウターです。暗くてちょっとわかりづらいですがそれほど異常はありません。 |
そして問題の(^^; 右レッグ。 異物あり。水が混入しています。大変良くない状況です。かなりヤバイ。 で、アウターてっぺんにインナーチューブが摺動するメタルブッシュがあります。その奥にも銀色に輝くブッシュが見えます。この2点で支えて、こじらないように、ガタが大きすぎないように、しかし渋くないように最小限のクリアランスを保ちつつインナーチューブは上下に摺動するのですが、明らかに左と右ではガタが違います。やはり右(オイル混入しており、フォームリングがボロボロになっていた方)のガタが大きかったです。ブッシュ交換です。 |
で、右レッグの中を掃除しました。上写真の汚れた状態ではどんな程度なのかよくわからなかったので。 が、白いのが取れません。既に腐食しているようです。指で触るとザラザラ、でこぼこしています。 なお、左レッグはきれいでした。 |
というところで考察は後日。
11月11日
ということになっていました。
それにしても整備して良かった。ご存じのようにロックショックスは一部のロワーグレートを除きマグネシウムレッグを採用しています。マグネシウムは実在する金属の中では一番軽くそれ故に様々な用途で使われるのですが、これまたご存じの通り非常に酸化しやすく大気中でさえもボロボロになってしまう恐れのある金属です。
そうならないようにロックショックスのサスペンションは塗装がしてあるのですが、さすがに中まではやっていない。ので水の混入は大問題なわけです。
と、気づいた頃には正直言って遅いってのはあります。
ところでなぜ水が混入したのか?
あくまでも推測ですが、どこからか入ったというよりフォークが吸ったのではないかと思われます。ダストシールがあまり機能しなくなってきて水がフォームリングに吸われた。更に右側は左に比べてインナーとアウターのガタが多かったので余計に混入しやすかったのかもしれません。フォームリングがボロボロになっているのはガタが大きいが故に(でもそんなにすごくガタがあったわけでもないのですが)フォームリングも巻き込まれてしまったのか?
アウターの中は指で触るとザラザラでした。砂粒のようなものもありました。が、これは砂粒なのか?それとも腐食して生み出されたものなのか?
しかしインナーとスライドメタルには傷は見あたらないので異物混入とは考えづらいので、腐食したものが剥離して落ちたと思われます。
あとインナーチューブとアウターのガタについてですが、ディスクブレーキ仕様の場合フォークはブレーキングによってかなりコジられるわけで、更にSIDは軽量化のためにアウターの長さが他のフォークより短いので余計にコジリに対してはシビアな状況におかれるわけです。今回のクランケ君もディスク仕様でした。ので、特にディスクブレーキ仕様の場合にはフォークのスライドメタルはオーバーホールの時に要チェックですね。
ただ構造的にちょっと疑問が沸いてきたのも事実です。一つ言えるのはオーバーホールの度にダストシール関係を要チェックすべきではあるということですね。
なお、右インナーの中身(ピュアダンパー)は更に筒になっていて(二重の筒になっている)その中にオイルが密閉されているのですが、密閉されているオイルには水の混入はなくちょっとオイルが汚れているくらいでした。が、筒と筒の間には水が入っておりました。
というわけで、ダンパーのオイルシールは問題なく機能していたようです。が、せっかくバラすわけなので変えておくってものですね。
さて、今回のSIDはハズレの不具合品なのか?いえいえ、そんなことはありません。SIDってのは軽くって良い動きをしてくれる良いサスペンションではありますが、だからといって万能って訳でもありません。軽くて良い動きをしてくれるように特化したサスペンションといえるでしょう。
ある機能に特化するということは他の機能を犠牲にしてまでもその分野のメリットを生かすことであり、SIDに対して言えば、例えばアウターチューブの短さもそうです。一目見てわかりますがSIDのアウターは異常に短くなっております。これはロングストローク化されているからではなく、「軽量化のため」にアウターが短くなっているのです。と言うことはインナーとアウターのオーバーラップは短くなり、剛性という意味では不利になります。特にディスクブレーキだとアウターはこじられるのでかなりシビアです。しかしこれも軽量化のため、仕方のないことなのです。
ではどうするか?これはもう頻繁にメンテするしかないです。残念ながら不具合があったとしても人間の体のように自然治癒することはないので”早期発見早期治療”が一番なのです。
しつこいようですがSIDは高価でもあります。これはノーメンテのために高価なのではなく、サスペンションとして究極の形に近づけるために特化したその代償なのです。SIDを購入すると言うことは高性能を手に入れるとと同時に維持する手間をももれなく付属で付いてくる物なのです。それがイヤなら凝った機能の付いていない安いサスペンションを購入すべきです。そのかわり高性能は付属されてきませんが。
ポルシェだってフェラーリだって、1000万超のお金を出せば買えるけど、買うと同時に維持する手間も必要になってきます(よね、きっと。もってないからわからないけど)。同じようなことだと思います。
オーナーのみなさんご存じですか?取扱説明書によると、フォームリングは10時間走行ごとにオイルをくれてやることになっているということを。水分を混入させないためにもオイル塗布は絶対にやっておきたいところです。同時に高圧洗車機にかけるのはすごくマズイことというのもご理解いただけたかと思われます。
おっ、なんかいい感じでしめくくれたか??ナンテイッテイルケド、ウチノSID、ホトンドノーメンテ。ヤバイッス。