整備日誌 2005年2月編
2月8日
と言うわけで遊輪館号のサイロのブッシュ交換です。
ここで言うブッシュとはアウターチューブとインナーチューブの摺動のためのブッシュスライドメタルのこと。アウターの中に入っております。
5インチストロークのシングルクラウンで8インチディスクを使用、更にAコースなどもガンガン走っております、それなりにブッシュの摩耗はあると思い交換は必須と考えておりました。が、これまた意外やきれいな状態。インナーチューブとの摺動部はしっかり樹脂コーティングが残っております。てっきりコーティングは剥がれ、地である銅が露出して・・・・と思っていたのですが攻めが足りないのか?それともこのフォークは当たりなのか?
しかしやっぱり揺すると微妙ながらガタはあるし、あとでブッシュだけ交換するなんて面倒ですし、それなりに乗っているから当然交換します。
交換すると・・・・なじみが出ていないためにちょっとだけ摺動抵抗がありますがこんなもん。乗っているうちにスムースになってきます。
さてせっかくブッシュも外したことですからアウターチューブの中を覗いてみます。と、まあノーメンテだったにもかかわらず良い状態でした。やっぱ当たりフォーク??
で、このブッシュとアウターチューブ内周を如何に良いコンディションに保つかを左右するのがダストシール&フォームリング。
3枚目の写真です。汚いです(^^;
ダストシールは読んで字のごとし、このシールで泥や水分などを払拭します。こいつがしっかり泥や水分を拭い取ってくれないと、その下にあるフォームリング(ま、言ってしまえばスポンジです)に泥や水分が付着してしまいます。
フォームリングにはスムースな摺動を得るためにオイルを塗布することになっております。が、ここに水分が付着すると水分がインナーを伝ってアウター内に入り込み、そうするとアウターはマグネシウム(Mg)ですから水(H2O)と反応して酸化してしまいガリガリの水酸化マグネシウム?を析出してしまいます。と、そのアウターはもう使えません。
「えっどうして?インナーとアウターは直接は摺動しないんでしょ、インナーとブッシュが摺動するんでしょ、それならアウター内部がガリガリになっていようが関係ないじゃん」と思われる方もいるでしょう。しかしそうは問屋がおろさない。
一番上の写真をよーく見るとわかるのですが、ブッシュには割が入っております。これはブッシュを装着する時にスムースに所定の位置まで持ってくるためで、所定の位置に来たらちょうど良いくらいに割が突き当たってポジションをキープしつつインナーをガタがない程度に、しかしきつすぎない絶妙な当たりを確保します。で、所定の位置にくるまではアウター内側をズリズリ擦りながら行くわけなので、バリなどがあるとブッシュ裏側が傷つけられてしまいインナーに対し正しく保持できなくなってしまうのです。
と言うわけで、ガリガリになったアウターはもう使い物にならなくなるということでもあるのです。そうさせないためにもダストシール&フォームリングはオーバーホール毎に交換したい物ですし、
フォームリングにはオイルを数滴塗布してあげましょう。ご存じですか?フォームリングへのオイル塗布は10時間走行毎になっているということを。今一度取扱説明書をよく読んでみましょう。
なお先日ロックショックスのセミナーがありまして、それによると長期間の室内保管でもダストシールはオゾンなどによって侵されてしまうということで、室内保管だからってノーメンテでOKというわけではないそうです。
と言うわけで、ふ〜ん等と思っている場合ではありません、フォームリングへ数滴フォークオイルを垂らして上げましょう。おそらく100人中99人はやってないでしょう。という私もやっていないけど(^^ゞ
なお、フォームリングへのオイル塗布の際には、細いマイナスドライバーなどで少しずつダストシールをコジリながら外して行います。
2月13日
ここのところネタが溜まってしまい、しかもそれらが面白いネタ(ということは話題性あり)だったりするもので、何から書こうか迷ってしまう今日この頃。人のことをとやかく言う前にやはり己を世間にさらすべきと思い、今回も弊店のクランケをさらしてみましょう。
バイクはGTのDH-I。2シーズンくらい私が使いました。といってもそんなに走ってはいないのですが(^^ゞ
で、実はこのバイクを売ることになりまして、売る前に整備を行いました。
DH-Iのキモはなんと言ってもBBまわりですね。以前ここの動く模様をアニメーションで解説しました。で、こんどは使用後はどうなの?というわけで早速オーバーホール。
I-DRIVEはフレームからロッドが生えており、ロッドにBBケースが繋がってスイングアームに装着されています。スイングアームにはベアリングで支持されており、要はサスペンションがストロークしてもBBの位置はほとんど変わらず、すなわちサスペンションの挙動によってペダリングが乱されない=ペダリングロスがない(全くないわけではない)というのがウリです。
しかしフレームから生えているロッドとBBケースが繋がっているということはそこに隙間があり、そこから泥などが混入しやすいということでもあります。実際悪コンディションの中を走るとかなりの泥が入ってしまいます。ので、たまにはメンテも必要です。というわけでバラしました。
ま、かつて何度かバラしては整備していたせいかコンディションは悪くなかったです。でもやはり泥の混入はしっかり認められましたのでメンテして損はありませんね。というかやはりメンテはちゃんとすべきです。
コンディションが悪くなかったため書くことがあまりない。ので、次回フロントフォーク編に続く。このフロントフォークは自分なりにちょこちょこいじった物なのでちょっと思い入れもあるのです。
2月18日
私が使用していたフォークは、KOWA MOBS STAGE2でした。このフォークの特徴は、右側がコンプレッションダンピング、左側がリバウンドダンピングを司るダンパー構造になっています。また位置依存式コンプレッションダンピング構造がとられ、しかもこの特性を変更することもできます、バラす必要があるけれど。おかげで苦労しました(^^;
さて、始めてこのバイク&フォークをおろしたときの印象はきわめて良くないものでした。
まず私にはリアはスプリングがあまりに硬く、全然有効に使い切れていないことでした。ま、これはおおかた予想がついていたのですぐにスプリングを変えてだいたい満足のいくものになりました。が、困ったのはフロントサスペンションでした。海外物と異なり日本製だから日本人に合わせたセッティングになっているだろうし、Jシリーズでも優勝をかざったフォークです、悪いはずはないと思っていたのですがどうにも私の好みとは違ったセッティングでした。いや好み云々ではなくセッティングがまるっきしダメでした。と言い切れるのは同じような背格好の(しかしテクはまるで違うけど)卓也に乗ってもらっても「おっかねー」と言わしめたからです。
富士見のAコースを走っても120ミリくらいしかストロークしませんでしたし、高速ガレ場ではとにかく跳ねてしまいおっかないという印象でした。しかもストロークし始めは非常にスムースにストロークするものの、途中から急激に動くのを渋る感じでした。当時既に乗っていたTREK LIQUIDに装着しているROCK SHOX PSYLOの方がよっぽどきれいに吸収してくれて快適に走ることができました。
さすがに参りましたね、この時は。安い買い物ではないし、それ以前のモデルのKOWAの動きを知っていたものですから、まさかこんなことになるとは思ってもみなかったので。
ただ色々いじることはできるし、「こうすれば良くなりそう」というおおまかなプランも頭の中にはできていたのが幸いでしたが。
と言うわけで本当は「私のセッティング日記」というのをそのうち作ろうと思っていたのですが、セッティングが完全に出る前に売ることになってしまったので・・・・
というわけで、本当は今回のオーバーホールについて書こうと思っていたのですが、「私のセッティング日記」を書いていこうかな。。
なお、今回のオーバーホールでは特に異常は認められず大変良い状況でした。
と言うわけでファーストインプレッション編は終わり。次回はセッティング変更1回目としましょう。
2月19日
サスペンションセッティング、特に下り系では”もてるストロークを有効に使いきる”ことがセッティングの第一歩だと考えます。ですのでまずはそのサスペンションのストローク量をほぼ使い切るようにセットしていきます。そうすることによって動きの質も自然と高まっていくものです。もちろん初めからストロークを使い切ってしまうような状態(しかも頻繁に)なら、もっと固めていく方向でセッティングをしていきます。
さて、昨日書いたような不満があったものですからその不満を取り除いていきます。途中までしかストロークしないというのであればその原因は
・スプリングが硬い
・コンプレッションダンピングが異常に高い
・フォークが曲がっている
等が考えられます。
まず装着されているスプリングはストック状態のミディアム。これはそれほど硬いとは思えません。と言うのも1G’で結構素直に沈んでくれるんですよね。このスプリングは等レートなのでストローク途中からグッと硬くなることはないのでスプリングは問題なしと考えました。
ではコンプレッションダンピングが異常に高いのか?これは後ほど。
フォークは曲がっていないか?というと、バラした状態でスコスコと大変気持ちよくストロークしてくれます。さすがはKOWA。というわけで曲がりも問題無しです。
さて、サスペンションセッティングを行っていく上での鉄則、それは変更箇所は1回につき1カ所ということ。バラすのが面倒だからと言って複数箇所同時に変更を行ってしまうと何が原因で良くなったのか(悪くなったのか)がわからなくなってしまうからです。
ということで、この時はまず油面を下げてみました。
と言うことで次回に続く。
2月20日
油面を下げたことの狙いは察しの通りエアスプリング効果を避けるためです。
油面を下げると言うことはその上にある空気の量を増やすと言うことです。STAGE2は180mmのスロトーク量を誇ります。180mm沈むわけです。想像してください、180mmも沈めばオイルの上にある空気は圧縮されるわけです。密閉された空気はまさしくエアスプリングになるわけです。もし空気量が少なければ(油面が高ければ)ストロークするに従い急激にエアは圧縮されるので反発力が強くなります。そりゃ沈みづらくなるわけですね。
そういうわけで油面を下げたわけです。が、油面変化による影響はどちらかと言えば後半に効いてくるので、120ミリ程度しか沈まないフォークで、はたしてどれだけ変化が現れるのか疑問でもありました。が、これまた作業の鉄則として、”簡単なことからやる”というのもあります。
果たして今自分がやろうとしていることが正しいことなのか、それとも間違ったことなのかを知るには、まず簡単なことからやっていくことで正誤を判断し、以降どんどん深く掘り下げていく方がリスクは少ないからです。
さて、当時の記録によると
・素押しでも半分程度しか沈まない。
・現地ではずいぶん良くなった。しかしまだ使い切れていない。25ミリほど残っている。
・初期は非常に柔らかく、残り85ミリ当たりから急激に硬くなる。よって有効に使っている領域はかなり少ないと言える。実際望みとは程遠い状態。
となっております。
とりあえず油面低下は間違ってはいない方向でした。が、だからといってどんどん下げるわけにもいきません。あまり下げてしまうとエアを吸ってしまう可能性があるからです。ダンパーがエアを吸ってしまってはダンピングできませんのでこれではイカンです。なお油面調整はオープンバス方式にのみ対応できる策です。
と言うわけで次なる策は・・・・
マタヒッパリマス
2月22日
まずSTAGE2の写真を見ながら解説していきましょう。
右はSTAGE2のコンプレッション側のキモ(?)をアップで撮った写真です。キモは白い部分。これが位置依存式ダンパーの要なのです。
真ん中当たりから右に向かってなんとなーく白いのが太くなっていくのがわかるでしょうか?
ここの部分、外径0.5ミリくらいずつ径違いの物がズラーっと並んでいるのです。そうですねぇ、イメージとしては望遠鏡ですね、望遠鏡ってコンパクトに収納するために筒の中に何段にも筒が入っていきますよね、あんな感じで白いのが並んでいると想像してください。
さて位置依存式とはどういうことか?
皆さんは理想的なサスペンションの例えとして「初期はスムースで後半じわっと踏ん張る」などと表現しますよね、まあこのような動きが最高かどうかは別として、このような動きを実現させるために生まれたのが位置依存式ダンパーです。
ダンパーのおおざっぱな基本的構造として注射器を例えに出したりしますよね。そういうわけで注射器を想像してください。注射器の中には水を入れます。と、ゆっくり押すと抵抗なく水は出てきて、素早く押そうとするともの凄い抵抗を感じますよね、この抵抗こそダンパーの基本なわけで、この抵抗によってバネがビヨヨーンと伸び縮みしたがるのを抑えます。
ところでゆっくり押すと抵抗なく、素早く押すともの凄い抵抗を感じながら・・・・とういことは、ダンパーの動く速度によって減衰力が変わってくることになります。ところが「奥でじわーっと」踏ん張らせたいわけですよね、このままでは速度には依存するけど、ストローク量には依存しないダンパーになってしまいます。これでは望みの特性は得られません。そこでサスペンション屋さんは考えた、ストロークするに従いオイルの通路面積を変えればいいじゃないか!
と言うことで鋭い方は気づいたかもしれませんが一応説明します。
上図で白いタケノコのような物はアウターチューブの下端に留まっています。そのまわりをインナーチューブが上下に動くわけです。もっとわかりやすく説明すると、望遠鏡が立っていてそのまわりをインナーチューブが上下に動くわけですね。で、インナーチューブと望遠鏡の隙間をオイルが通るわけで、望遠鏡のようになっているわけですから場所によってその隙間は変わるわけです。そのようにして通路面積を変えて減衰特性を変えているのです。
ここはオーソリティにアドバイスをいただこうと生みの親、KOWAのS氏にヒントをいただきました。
ところで困ったことが起きた場合すぐに人に聞くのはいけません。まず考えて、それでもダメだったら人に聞くようにしないといけません。困って考えるからこそある程度は知識が付くわけで、何もわからずにオーソリティに知恵をいただいても対応できません。子供の教育だってそうでしょ、わからないからといってすぐに人に聞いたり教えたりしては本人のためにはなりませんよね、まず考えさせて、それでもわからなければヒントでも与えて、それでもわからなければ教えてあげると。そうじゃないと本人のためになりませんよね。
さて、ちょっと話が逸れましたが氏曰く、途中から急激に硬く感じるようであれば、それは位置依存特性を司るタケノコが悪さをしているかもということです。なるほど。と言うわけでタケノコのセッティングを変えてみました。と言うか、変えられるようになっているのはエライ。このようなタイプの位置依存式ダンパーは既にオートバイなどで採用されているようですが、おそらくいじれるようにはなっていないだろうなー。さすがはマニアックな自転車用サスペンションです。蛇足ながら、マニトウのTPC+も位置依存式だったりします。ただTPC+がこのような調整をできるかどうかはしりません、おそらくできないと思われます。バラしたことないからわからないけど。
2月23日
そいうわけでタケノコを組み替えた印象は”相変わらず硬い、しかし飛び降りたときなどの突如硬くなるフィーリングは和らいだ”と記されております。この収穫は大きい?
相変わらず硬いというのは気になりますが、「飛び降りたとき」の突如硬くなるフィーリングは和らいでいるわけです。飛び降りたときというのは、とっても早くサスペンションが動くときです。前回書いたように通常サスペンションはストローク速度(というと素人臭いのでピストンスピードと書こう)に減衰力が依存するわけです。それがとても早く動く時に硬くなるのが和らいだということは、タケノコ交換が確実に功を奏しているということです。しかしやっぱり硬いことには変わりありません。ので、次なる秘策?を。
と言ってもこの策はあまり私の望んでいる方向とは違ってきちゃうんですよね。でもまずは動かしきってやるためにはこういうのもありかな?ということで次回に続く。
なお減衰力には伸びと縮み(コンプレッションとリバウンド)があり、一般的には伸び側の方が重要視されますが、今なんとかしたいのは縮み側です。とにかくストロークしたがらないのをなんとかしたいので、縮み側をいじっているわけです。では伸び側はまったく問題ないのか?と言うと実はこっちももうちょっとなんとかしたいのですが、まずは縮み側をと言うことで。
2月25日
で、何をやったかと言えばスプリング交換。
ま、柔らかいスプリングにすれば沈みやすくなるので、確かにストロークを有効に使うことができるようになってきますが、ただ単に沈めばいいってもんでもありません。
と言うのもSTAGE2に初めて乗ったときの印象が”ストロークを有効に使い切れていないながらも、1G’で結構素直に沈んでくれる”というものだからです。
いくらダウンヒルサスペンションと言ったってストローク量は無限ではありません。安易に180ミリストロークさせるために柔らかすぎるスプリングを使ったりすると、乗っただけで100ミリストローク、残りは80ミリ(ちょっとオーバーか)なんてことにもなりかねません。ので、初期の動きがスムースなのに更に柔らかいスプリングを入れるのは抵抗を感じていました。が、やってみました。
と言うのは、STAGE2のプリロードは「なんでそんなに?」ってくらいに調整ダイアルがグルグル回ります。ってことはそれだけプリロードをたくさんかけられるということなんですね。
で、プリロード。
”プリロードをかけるとスプリングは硬くなる”なんて言ったりしますが、これ正しいとも言えるし正しくないとも言える。
プリロードとはその名の通り予荷重。あらかじめ荷重をかけておくこと。
たとえば50キロで押したら50ミリ縮むスプリングがあるとする。これに20キロのプリロードをかけたら、同じように50キロで押しても30ミリしかストロークしません。ってことは見かけ上沈む量が減ったわけだから硬くなるって感じですよね。しかしバネとしての特性は変わらないので、いくらプリロードをかけても同じ入力に対して同じ量だけ沈む(プリロード以上の荷重がかかった場合)のは変わりません(バネ定数は変わらない)。
よって、正しいとも正しくないとも言えます。
ところでプリロード、これだって無限にかけられるわけではありません。いくらプリロードダイアルがグルグル回るからと言ってプリロードをかけすぎた場合、フルストロークするより先にバネが線間密着してしまっては元も子もありません。それこそその瞬間リジッドになっちゃうわけですから。でもSTAGE2のスプリングはかなりプリロードをかけてもOKと確認を取りましたので(逆に考えるとあまり賢くないスプリングってことなんですが)採用です。
と言うわけで私の目論見は、ソフトスプリングにしてプリロードをいっぱいかけるってことです。
こうすることで初期は柔らかすぎず(プリロードいっぱいかけているから)、後半はレートが低いので有効にストロークさせやすいと、捕らぬ狸の皮算用ですな(^^ゞ
次回そのスプリングを斬る。いやぁ、斬り甲斐のあるスプリングです。
2月28日
そいうわけで標準で入っているミディアムスプリングとソフトスプリングの対比をしてみます。
上がミディアム、下がソフト。なんか見るからに長さが違います。そしてミディアムは等ピッチですが、ソフトは不等ピッチ(と言うか2段ピッチ)スプリングになっています。
まず長さの違いですが、スプリングレートが違うというのもありますが、へたりによるところもあると思われます。
そして2段ピッチのソフトスプリング。
私はあまり可変レートのスプリングが好きではありません。可変レートは言葉で表現するとすごく良さそうに思えるんですよね。
ダンパーの所でも書きましたが、例えば「初期はソフトに、しかし後半はグッと踏ん張る」というのを良しとするならば可変レートはすごく理にかないそう。しかし・・・・徐々に硬くなっていくのでは、例えば「なんか硬く感じる」という場合、それがどこからから硬くなっていくのか、その時のレートもわかりません。わかったとしても次はどのようなスペックのスプリングにすればよいのか設計は大変難しくなります。ましてやそれに合わせたダンパーセッティングなどできるわけでもないし。
と言うわけで私は等レートスプリングの方が好きです。特に今回のクランケのようにオープンバスタイプではダンパー油面上の空気室がエアスプリングになる=イヤでもプログレッシブ特性になっていくのですから。
さてこのソフトスプリング、そういった意味では可変レートには変わりないのですが、皆さんが想像されるような徐々にピッチが粗くなっていって・・・・というのではなく、あるところで突然ピッチが変わっています。2段ピッチです。しかももの凄く突然に。
この手のやつは想像されるように突然レートが変わります。でも徐々にレートが変わっていくより対処しやすいからまだマシです。が、もの凄い変わり様です、このピッチ。ピッチの細かいところは実測1ミリ程度しかありません。更にここが縮みきると巻数は半減します。バネ定数は巻数に反比例するのでこのスプリングの場合、ピッチの細かいところが線間密着するとレートが2倍になると言うことです。しかし2倍になっても計算上のバネ定数は他社のスプリングと比べるとすごく低いですね。
と言うわけでこのスプリングのピッチが細かいところはアッという間に線間密着します。ここのたわみ(ストローク量)は20ミリ弱しかありません。実際走っている状況ではピッチの粗い方だけを使っていることになりますね。
ところでこのスプリング、リバウンド側は構造上ピッチの細かい方を動く側(下側)にセットしなければなりません。ピッチの細かい方=重い方です。サージングには不利だ・・・・
それにしてもこのスプリング、たわみがすごく多い。ソフトスプリングで約240ミリ、ミディアムスプリングに至っては300ミリくらいたわみます、180ミリストロークなのに。ネガティブったって25ミリなのに。もったいない。もっと軽くできるのに・・・・ま、今回はプリロードかけまくり作戦なので過剰なたわみをうまく利用してやるわけだけど、それでもそんなにかけません。