整備日誌    2007年7〜8月編

7月10日
いやー、かなり日数があいてしまいました。いつものごとく、やることはあったのですがなかなかやる暇がなく…という言い訳はいつも通り。
ってなわけで久々にいってみますか。
今回はいつもご夫婦で走っておられるMRTさんのREBA。
フォークではないところの調整でご来店されたのですが、なにげにフォークを押してみるとカ・タ・イ、突っ張る、しかもある程度力を入れるとガクッと動く。これはREBAの動きではない。というわけでバラシにはいることになりました。

まずはフォークのインナーとアウターをバラし、そうすると出てくる潤滑用のオイル。
ちょっとアメ色で、でもこういう色が正常です。
そこそこレースとかにも参加されているので、そういう状況を考慮するとよい状態ですね。

これは外したアウターの中。
てっぺんのグレーがダストシール。異物の侵入を防ぎます。
その下の黄色っぽいのが潤滑オイルをため込むフォームリング、更に下に余分なオイルを掻き落とすオイルシールがあります。
で、その下にアウターとインナーのガタを無くし、しかしスムースに動くようにするためのブッシュ(肌色)があります。
更に下に見えるグレーはアウターの内部。マグネシウム製です。
こちらも良い状態ですね。
こちらは右のアウター内。写真ではわかりづらいですがアウター内の状態はよかったです。
が、オイルシールめくれ上がって見えます。
アップにしてみるとこのようにめくれ上がっていました。
突っ張りつつも動き出すとガキって感じで動くのはこれが原因だったのかな?
これは右インナーに入っているダンパーオイルを抜いた物。こちらもよい状態です。
ダンパーとはスプリングが反発して伸び縮みしようとするのをジワリと動かしてやる物。
これがないと跳ねてしまいます。

全バラの図。

続く。


7月30日
ちょっと面白い?デュアルエアを考察してみましょうか。

これは左インナーの中の状態を表しています。
インナーの中にロッド一式が入っているのですが、わかりやすくするためにインナーの下に置いてみます。
Aがネガティブエア室でBがポジティブエア室。
エアを入れる鉄則として、まずポジティブ(B)からエアを入れます。と圧によりロッドがグングン伸び、下端がインナー下に突き当たるまでB室の容積を広げます。
次にネガティブエア(A)を入れます。机上の理論で言うとネガティブエアはポジティブエア以下(以下とはイコールもしくはそれより少ないと言うこと)にセットします。そうするとAの容積はこのまま増えることはなく、しかし圧はグングン上がっていきます。
このようにネガティブエア室は狭いのでポジティブエアに比べ圧倒的に少ないポンピング数で規定圧になるのですね。
こちらはほぼフルボトムした状態です。
Aの左端の位置は変わることなく、しかしロッドがピストンを押しBの容積を縮めていきます。と、同時にAの容積は増えていきます。
ここで化学でも思い出しましょうか。
ボイルの法則というのがあって、これは気体の体積X容積は常に一定というのがあるのです。
で、それを当てはめると、ストロークするに従いBの容積は減りつつ内圧は上がる。同様にAの容積は増えつつ圧は下がる。そしてその積は常に一定。
うーん、学校で習うと何のことかわからないけど、好きなことに例えるとわかりやすいなぁ。

で、動くとこういうイメージですね。
Aの左が動いちゃっているけど実際には突き当たっているので動きません。単にロッドとピストンのみが動くだけです。これが動くことでAとBの容積が変わるんですね。
で、初期の頃のエアサスはネガティブ室がありませんでした。ので、衝撃を受けて縮むとB室の容積が減り圧が上がります。そして伸びるときは上がった内圧でフォークを伸ばそうとするのですごい勢いで伸びるわけですね。で、伸びきったときには突然動きが止まるから「コン」という手応えを感じたものでした。
ところがネガティブエア室を設けることによりフォークが縮むとB室の圧は上がりつつA室の圧が下がります。そして伸びるときにはA室の圧が低いとは言うものの、もともと加圧していたわけですし、以前のサスペンションでは圧がかかっていなかったわけですから(厳密に言うと違うけど)それでも一気には戻りづらいわけです。しかも伸びるに従いAの圧は上がり(元に戻り)Bの圧は下がるので、徐々にゆっくりと戻るわけです。
うーん、うまく考えたなぁと思う仕組みです。


というわけで、仕組み、構造がわかるとサスペンションも理解できると思われますし、せっかく付いている調整機構をもっと有効利用してやろうという気にもなるかと思われます。
オーバーホールに伴って各種O−リング等を変えてやったら、ちゃんとREBAの動きに戻りました。


8月30日
最近ふと思うのですが、ロード乗りの皆さん、エア高すぎませんか?
お客様といろいろ話をしていて空気圧をいくつにしているか聞くと9キロとか10キロとか話される方が多いです。特にマッチョマンタイプで体重がありそうなわけでもなく、一般的な日本人体型の方でこのようなエア圧は高いと思います。
なんでそんなに高くしているのかと尋ねると、「タイヤが10キロまで対応と書いてあるから」とか、「エア圧が高い方が軽く走れると思って」という答えが多いです。
たしかにタイヤにMAX.10BARと書かれているのであれば最高10気圧まで入れてもかまわないわけですが、でもリムの方はそこまで対応しているのか?
今手元にMAVICのパンフレットがあるのですが、これによるとMAVICではタイヤ幅23mm(23Cを意味するのだと思う)では9.5BARまで対応可と書かれています。28mmなら8BARです。
一方、ミシュランのPRO GRIPなど60Kg程度の私の体重だと23Cでエア推奨値は7キロ未満でした。
それにしても最大で10キロだからといって最大にすることもないと思います。たしかに転がり抵抗は少なくなるかもしれませんが、タイヤがたわみづらくなることで乗り心地が悪化し=ロングライドで疲れてしまうし、タイヤが跳ねる=マクロ的にみて一瞬タイヤが地面を離れる=駆動が逃げるということにもなるのではと思ったりもします。
10キロなんていう圧は室内競技のような、路面コンディションの抜群に良いところでのみ効果を発揮すると思うんですけどね。
まだロードバイクのほとんどがチューブラーだった頃、当時としては珍しくクリンチャーリムでホイールを組む作業依頼がありました。当時からクリンチャーのエアはチューブラーより低くすると言われていました。なぜって?タイヤの空気圧がリムを開こうとするからです。どうなのかなと思い空気を入れる前と入れた後でブレーキを握り比べてみると明らかにレバーの遊びが違いました。空気圧でリムが広げられブレーキシューとの間隔が変わっていたんですね。空気の力、侮れません。
今時の剛性の高いリムならこのようなことは起きづらいのかな?こんどやってみるか。


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