整備日誌    2021年5月編 
 
5月14日
これは数ヶ月前に行った作業ですが、アップがかなり遅れてしまいました。
オーナー様からウエブにアップしても良い旨、了解頂いておりますので記事にしてみました。
いきなり作業前後。左が作業前で右が作業後。ぱっと見では何をやったのかわかりません。依頼内容はメンテナンスなんですが同時にちょっとした(?)バージョンアップもしました。
さて何をしたのでしょうか??
この自転車自体はありがちなお手頃価格の折り畳み自転車です。
譲り受けた自転車(すなわち中古、しかもしばらく放置)と言うことでメンテナンスをして欲しいということでした。が、通常のメンテナンスではなく、ほぼ全てにおいて見直して欲しいとのこと。
正直申しまして見るからにお手頃価格の折り畳み自転車ですので、果たしてそこまでしてやる意味が、価値があるのかと思いました。
それにはそれなりの時間(期間)と工賃がかかりますし、お手頃価格の自転車ですからフレームや部品自体の精度などもそれなりの物です。
その旨お客様に伝えたのですが「それでもやって欲しい」と言うことでしたので、ならば私もスイッチが入ります。やりましょう!
と言うわけで作業開始です。





 
まずフロントハブ。
一般車にありがちな、いわゆるグリス色のグリスが入っています。
この手のグリスはしばらく使っていないと固まりやすく、グリスとしての効果があるのか?と疑問に思うこともあります。が、グリスが入っているだけラッキーですね。
あまり言いたくないけれど、一般車のハブベアリングってかなりアバウトな作りになっています。
よーく見るとバラさなくても外からベアリングの鋼球が見える=シールもありません!
ですので錆びていないだけ、グリスが残っているだけラッキーです。
  クリーニング後です。案外きれいでした。
でもよーく見ると銅色っぽく当たりの強いことがわかります。
でも打痕や錆は無かっただけマシです。
ついでに言うとハブ自体作りはかなりラフで、ハブの胴体(真ん中の円柱)の両端にワン状のベアリング受けを付けただけです。
胴体も円柱をバッサリぶった切っただけで、バリも取られていない等結構ラフだったりします。
一般車のハブってその程度の物です…
 
   
 
フロントのハブ軸。
バラすとこんな感じ。
でもグリスが残っているだけ有り難いです。
  フロントのハブ軸をクリーニングしたらこんな感じでした。
案外きれい。
しかしハブ軸の同芯度(偏心)は結構ラフですし、ワンの両端に付いているダストキャップも作りや嵌め付けがアバウトですから「ベアリング」という言葉から想像されるようなスムースな転がりは期待できません。


 
 
リアハブ。
開けてみると青っぽいグリスが入っていました。
これもグリスがあるだけラッキー。
  そしてクリーニングしたリアハブ。
こちらも案外きれい。
放置?されていた割りにはコンディションいいですね。
あまり乗っていなかったのかな??


 
 
リアハブ軸と玉押し、そして鋼球です。
グリス少なめだけどグリスまみれになっているだけいいですね。

  クリーニングしてやると、これも案外きれい。


 
 
ハブシェルです。
これまた錆び等あまりなくコンディションとしては良かったです。

  クリーニングしてフェイスカットしました。
精度が精度でしたので、それなりに削る量は多めでした。
 


 
 
やはりワンもベアリングもハンガー軸もグリスでまみれていました。
しかし一般車に使われるグリスは、硬くてあまり粘りがないので回転は重めです。
  クリーニングしてやるとやはりきれいでした。やはりあまり使っていなかったようです。
しかしワンや軸には既に当たりの強かった跡がありました。
ここは定番のデュラエースグリスを充填します。
もっと軽いグリスまりますが、普通に使うには適度なちょう度ですし、なんと言ってもシマノが保証するグリスですから普通に使うには最適でしょう。


外したヘッドパーツ。
こちらもグリスにまみれていますが、少し汚れも目立ちます。
下玉押しを確認しますとちょっと打痕っぽく、当たりが強く見えます。




クリーニングすると見た目はきれいです。
下玉押しを見ますと、やはり当たりは強いですね。
ちゃんと調整していなかったか、それとも意図的かも?
と言うのも小径車はどうしてもハンドルがふらつき気味になりがちです。
それをおさえるためにヘッドパーツの締め具合を強くされることがあります。
それで当たりが強いのかも?






と、作業をしたのですが、その後お客様から多段ギア付きにできないか?と問われました。
この自転車はギア無しのシングル仕様。ギア付きはリアのエンド幅が異なるので不可なのですがこの自転車、同じフレームでギア付きがあるのか、それとも単純に作りが適当なのか、ハブの幅に対して尋常ではないほどエンド幅が広かったのでした。
と言うわけでこれ幸い?と言うことにしてギア付き仕様にバージョンアップです。これが冒頭の答えになります。
作業後の写真をあえて後ろから撮影したのは、内装5段ハブがわかりやすいようにしたためです。
通常なら価格や手軽さから外装6段変速あたりにするのがお手軽ですが、内装にしたいと言うことで内装5段にバージョンアップしました!
そういうわけでリアホイールはメンテしたけど新たに組みました。

結局メンテナンス代と内装5段化などで、どう考えてもこの自転車の新車価格を超えた金額を請求する事になったのですが、多段化による適切なギア選択が可能になったことに加え、各部のメンテナンスによる走りのスムースさも実感でき大満足と有り難いお言葉も頂戴しました。



整備日誌へ戻る