整備日誌
2022年2月編
  
2月1日
もう1年くらい前の話になるのですが、ロード乗りのお客様から奥様用自転車のご相談を頂きました。
お買い物兼普段乗り用ですので、カゴ、スタンド、カギ、泥除け等は必須で、いわゆる一般的なシティーサイクルです。
とは言え奥様は以前ロードバイクをお乗りで、走りに対しての要求はそれなりにあるはず。と言うか、ご主人と私とで勝手に盛り上がり機種選びをしました。
私がお勧めするのは外装6段変速付きで車重が軽いマルイシのプルエイム
ご主人にこの自転車のポイントをお話しし、”あーだこーだ”と話をしているうちに、この自転車をベースにもっと軽量化しましょう!ということに。
以下、私とご主人とで勝手に改造の始まりです。

 


 

まずタイヤを何とかしたいと。
ノーマルは27インチですが選択肢を広げるために700Cに。
それにはリムの組み替えが必要になり、とするとフロントブレーキシューが適切な位置にくるかが問題となりますがこれはクリアできたので700Cに組み替えです。
それとタイヤ幅ですが普段使い用ですからあまり細いのは気を遣うと言うことで32Cに。もちろん軽量化のためにケブラービード。
価格と信頼性のバランスなどを考えてコンチネンタルのウルトラスポーツの700X32Cでいくことに。
そうするとリムも適度に幅広がいいのでこれまた価格とクオリティからMAVIC A319をチョイス。
奥さん用ですから体重も軽いしスポークは#15を選び、当然軽量化のためにアルミニップルで組む。
せっかくならカラフルなカラーニップルで組めば「やってる感」を演出できるのですが奥様そういうのは好まないそうで、普通のニップルと同じシルバーで組みました。
 

 


この自転車は自動点灯ライトなので利便性を考慮しフロントは標準のハブダイナモで組むとしてリアをどうするか。
一般車ですからエンド形状は正爪(ロードエンド)。
スタンドや泥よけも付きますのでクイックは不可。ナット式。
またローラーブレーキなのでこれを使用するとハブが限定されてしまいます。と、現在の6段ないし7段にするかしかないのですが…
そんなところで探し出したのが”神”なハブFH-IM70!
(あっ、写真取り忘れた)
これならやりようによっては12段!まで対応できる!!
純正のボスハブに対しフリーハブになりますので軽量化とハブ軸の支持剛性アップが期待できます。
でも神経質すぎないように,、そしてコストとの兼ね合いで10段仕様に。
と妄想は膨らむもののこのフレームにはディレイラーハンガーが無いので10段ディレイラーを装着できません。困った。
色々探したら正爪にディレイラーハンガーを付けられる小物を発見。
何種類かあったのですが、安直なやつだとホイールを外す際にディレイラーもブランと外れてしまうのでカッコ良くないし、10段にもなるとディレイラーの位置決めをしっかりしないと変速不具合が出る可能性もあると思いフレームにねじ留めできる物を入手。
しかしそれにはディレイラーハンガーをフレームに留めなければならず、穴開けとねじ山を立てないとなりません。
言うのは(書くのは)簡単ですが専用の治具があるわけでもないので…
とは言うものの、乗りかかった船、ここまできたら後戻りはできない、色々苦労しながら穴開け後ねじ山もちゃんとたてました。
でも垂直出しには苦労した…

その苦労あって変速性はとても良く、それこそ7900 DURA-ACEよりよっぽど軽くカッシリ決まります。
そう、ご主人は弊店で一番はじめに7900 DURA-ACEを装着したお客様で、しかも軽くて変速性のいい7800 DURA-ACEからの載せ替えだったものですから、当時はホント「どうして?」ってくらいに苦労しましたっけ。





ついでにヘッドパーツなんですが、プルエイム、これだけ軽量化に余念が無いのにスチール製なんですよね。
重量面でも不利だしお買い物自転車です、雨にさらされることもあるでしょう。せっかく色々いじっても錆まみれになってみすぼらしくなるのも何だし、価格もそんなに高くないと言うことでアルミ製のヘッドパーツに。
どうせヘッドパーツ外すならヘッドチューブのフェイシングもということで。





そしてどうしても気になっていたのがクランク。
ここはBB込みで結構軽量化できる&一般車のBBって…というのがあって是非とも交換したかったところ。
しかしスポーツ車のクランクがそのままうまく付くのかやったことがないのでちょっと不安。
特にチェーンケースもあるので干渉することはないか、チェーンラインは?、だいたいBBのシェル幅が厳密に言うと一般車はスポーツ車とは違うし…
とは言え軽さ、剛性、チェーン外れ防止などを考えると是非ともやりたいところ。
と言うわけでクランク&BBを外す。
ならばやっぱり精度を出しましょうと言うことでBBシェルのフェイシングも。




面出しするとこれだけの削りカス。
ま、こんなもんです。





などとやっていればフレームは裸になります。
せっかくなのでガラスコーティング。


 




おおよそ下ごしらえができたら組み上げていきます。
まずリアの駆動系は前述したように10段としました。
6段から10段なので、せっかくだからローもトップもノーマルよりワイドな11-32Tに。
それでもクロースレシオにもなっているんですけどね。
リアディレイラーについては、フロントシングルなのでチェーン外れは是非とも避けたい。特にお乗りになるのが奥様ですから、つまらないトラブルで手を汚すなんて避けたいので信頼性重視でチェーンスタビライザーの付いた、GRXのリアディレイラーを装着(笑)




そしてフロント側。
チェーンケースとのクリアランスやギア比などを考えると、とりあえずノーマルと同じ歯数がいいかなと言うことで32Tで。
そしてチェーン外れは絶対嫌なのでナローワイドのチェーンリング。(笑)
こうやって見るとこのチェーンケースはかなり大きなギアにしても大丈夫そうですね。






そして組み上がりです。
パッと見は、よくあるシティサイクルと変わりませんが、よーく見るとあちこち色々凝っています(笑)
何だかんだで1.5Kgf以上軽くなりました!
ただ価格もそれなりにかかり、電動アシスト自転車とほぼ同じような金額になりました(笑)
けど軽さと満足感はそれ以上で奥様も相当気に入っておられるそうです。
良かった良かった。



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