整備日誌    2004年6月編

6月13日
今回は前回に引き続きARTKさんのサスペンション。その名もロックショックス JUDY FSX。
おお〜JUDY FSX、懐かしい、私も以前使用しておりました。
スペシャライズドが当時ロックショックス社に作らせた専用サスペンション。この当時ロックショックスはJUDYの発売で波に乗っており大ウケ。そんなところへカーボンレッグという、これまたマニア泣かせなスペックで登場しました。
さて、そんな稀少?なJUIDY FSXですが、サスペンションが縮んだまま戻らないとのこと。
実はちょっと前に同じ症状で作業したものがありおおかたの予想は付きました。
で、バラしたのが左の写真。
今となっては珍しいコイルスプリングなしのぜーんぶエラストマーによるスプリング+カートリッジダンパー。
まあ結論から言っちゃうとエラストマーが劣化して縮み切っちゃって戻らないから縮んだままという状況なのですが、縮みきったエラストマーはとにもかくにもなかなか出てきてくれなくて、ボロボロとこぼれ落ちてくるという状況。まあとにかくなんとか吐き出す。
で、気付いたのですが、エラストマー変えてありますね、このフォーク。この当時のJUDYは6連エラストマーからなり、その組み合わせを変えて硬さを変えたものでした。それをもっとリファインさせたのかな?
今にして思えばこの当時はあまりサスペンションというのを深く考えていない(?)時代でしたね。
サスペンションをいじると言ってもとりあえずエラストマーを純正の硬さ違いのものに交換して自分好みに合わせたりってくらいだったかな。まあ、それはそれでいいのですが純正じゃないエラストマーを入れたりすることもありました。とりあえず入れば、長ささえ合えばOKってな感じでやっていましたね。でも今にして思えばエラストマーのストローク量もわからないし硬さもどの程度変わるのかわからないし、だいたいエラストマーの硬さってどうやって表すんだろう? 「あれよりは柔らかいけどこれよりかは硬い」って程度でしかわからなかったですから。
良き時代でしたねぇ。
さて次にダンパー。上の写真をアップにしたのが右写真。
ぶっちぎれたエラストマーもよくわかりますが(^^; ダンパーからオイルが漏れているのもわかります。
ふと思えばこれ初期型ダンパー。カートリッジ自体がプラスチックでできています。ので、精度なのかそれとも温度に耐えられないからなのか、よくオイル漏れしました。私のもそうでした。直してもそれでも漏れました。
その対策のためか後期型はアルミボディになりました。が、それでもやっぱりオイル漏れは起きました(^^;
この当時JYDYはオイル漏れとの戦いでしたね。漏れるから直す→直してもまた漏れる→仕方なくカートリッジを変える→どうせならロングストロークのDHカートリッジに交換なんてのをよくやりました。
それでもねぇ、やっぱり漏れちゃったりするのでした。カートリッジダンパーのオイルが漏れては減衰力を発揮できません。ダンパー無し状態になってしまいます。じゃーどうするのか?、この当時JUDYの下級グレードにINDYというのがありまして、これはエラストマーのみによるダンピングでして、要はオイル漏れしたJUDYは機能的にはINDYになってしまうのです。
と言うわけでオイル漏れしたJUDYはINDYとして第2の人生を歩むのでした。
そんな時代だったんですね、穏やかだったなぁ....

7月9日
またしてもサスペンション、そしてまたしてもマルゾッキボンバーZ−1。これだけ登場するということはそれだけ支持を得たわけで、しかしそれだけトラブルも出てくるわけで....というわけで今回もオイル漏れ(^^;
出てきたオイルは右のように真っ黒。ま、そんなもんでしょう。

左レッグ 右レッグ

で、バラした写真がこれ。
左が左レッグで右が右レッグ。
この当時のZ−1は左右同じ構造なのですが、違う部品が入っているのがわかるでしょうか?同じフォークを何度も記事に載せても面白くもありません、ちゃんと理由があるのです。
ダンパーの色が違います。そう、このフォークは過去にRCR(今で言うローミック)のカートリッジダンパーに替えたのでした。ま、それとオイル漏れとは全く関係はないのですが。
RCRのカートリッジはコンプレッション側のダンピング調整ができるのがウリでした。当時Z−1の性能は多くの人が認めたものですが、更にこのRCRのコンプレッションダンピング調整機構付きカートリッジに交換することで、よりハイレベルなサスペンションにバージョンアップできると言われていました。
さて、オイルが漏れたわけですから当然オイルシールを交換します。マルゾッキの場合オイルシールと一緒にダストシールもついてきますので一緒に交換します。
せっかくですから装着されていたホイルシール&ダストシールと新しい物とを比較してみました。
青い物が装着されていたオイルシール、その隣が装着されていたダストシールです。
以前扱い元から聞いた話では、青いオイルシールはオイル漏れを起こしやすく以降黒い物に変ったということでした。
一緒にダストシールも変わりました。最新の物はダストシールの高さも厚く、いかにもしっかりと仕事をしてくれそうな感じです。実際、最新のオイルシール&ダストシールの組み合わせではオイル漏れはほとんど解消されています。
更に今回はスライドメタルも変えました。
以前Z−1でやはりオイル漏れが完璧には解消せず1年乗るとオイルが漏れてくるというのがあり、インナーチューブにもちょっとガタがあったのでスライドメタルを変えたことがあります。それ以降そのフォークのオイル漏れはなくなっております。

左が新品、右が装着されていた物

さて今回のフォーク、やはりインナーチューブを揺するとちょっとガタがあります。更に右の写真を見ると、使用していたスライドメタルの隙間は均一ではなく、下に行くに従い隙間が狭まっていることにも気付きます。これは反対側レッグにも同様に見られました。スライドメタルが変形してバネ性を失ってしまったのでしょう。
目視では内外面の傷や摩耗等の異常は認められないし、触ってみても同様です。
いざ新しいスライドメタルを入れて組み上げると、明らかにガタは減少していました。
スライドメタルも変えたしオイルシール&ダストシールも新品に変えたし、これでまた当分のあいだ問題なく使用できるのでしょうね。
う〜む....新しいフォークも買って下さい(^^;

7月13日
ここのところサスペンションネタばかりでしたが、久々に違うネタを。
アレックスモールトンにお乗りのHSO氏から「フロントサスペンションからギコギコ音がする」と修理依頼。また走行距離も1万キロを超え、そろそろ重要部分のメンテをということでお預かり。
どれどれとまずはバラしにかかるのですがなんかフォークが変。弟のモールトン号と比べてみると、あれ?縮んだままの状態のようです。伸びない。なぜ?
ま、とにかくバラしにかかります。しかしスプリングが縮んだままの状態のサスペンションをバラすってのはちょっと嫌な作業。万が一作業中にビヨーンってサスペンションが戻ったら、吹っ飛んできやしないかとちょっとハラハラ。
でもバラさなきゃ話にならないので作業を進める。勇気を振り絞って?フォークを引っ張っていたら抜けちゃった。というわけで、右の写真が外れたフロントフォーク。この上にスプリングの受けがあって、更にその上にスプリングがきます。
この黒いゴムが砂などを巻き上げないようにする栓なのですがちょっと硬化してあまりいい仕事をしてくれていなかったようです。
ま、何はともあれ、モールトンではここにブーツをかぶせておいた方がよいですね。っとは言うものの、AM-GTには初めから装着されてはいないのですが。

さてフォークは抜けたけど肝心のスプリングはまだフレーム内に残ったまま。
オーナーの皆さんは既にご存じと思われますが、モールトンはヘッドチューブの中にスプリングが入っています。うむむむ・・・・スプリングが飛び出してきたら....やっぱ怖い。けどやらなきゃならない。
とにかく叩きまくってでも外さなければならない。ちょうどうまい具合にたたけそうな棒を探し当て、潤滑剤を吹きまくりとにかく叩く。しかしちょうど叩きやすい所にスプリングのストッパーがあったりするわけで、ってことはスプリングは叩きづらい場所にあり、しかも3桁万円の自転車と思うと躊躇しがち。が、躊躇していては先に進まないので自分を信じ(っていうか半分神頼み)格闘すること2時間くらい、ようやく外れました。
いや〜、怖かった。やっているうちに徐々に受けが動いているのがわかり、それを希望に叩いていたのですが、徐々に動くって事はやはりいつかはドッカーンと飛び出すのではないか?(しかし臆病です)とビビリながらの作業でした。ま、いらぬ心配だったのですが。
さて、左写真が外れたスプリング。まるでバナナのように変形しまくっています。
あとこの写真ではわかりづらいのですがグリスにまみれたスプリングには、砂がかなり付着しています。上の写真の栓がイマイチちゃんと仕事をしていないということか。
さらにこれまたわかりづらいのですが、このスプリングはかなり部分的に当たりが強くなっています。当たっているところはビカビカに磨かれ・・・・って領域を越え、当たりまくって削れて減っています。

当然このスプリングは使えませんから新たなスプリングを注文。して驚いたのが右の写真。
あまりに自由長が違います。ということは、それだけヘタっていたと言うことです。ついでにバナナ具合もよくわかります(^^ゞ
バネの形状からしてかなり応力高そうなので、それがヘタリに結びついてしまったようです。
これらのことを扱い元のダイナベクターさんに聞いたところ、まあありがちなことなんだそうです。ふむふむ。
次回に続く。

7月18日
モールトンは前後サスペンション付きの小径車。フロントサスペンションはリンクを介してスプリングを押すタイプです。で、このリンク部分がサスペンションの要だったりします。
左写真がそれをバラした写真ですが、このリンク部に水色のドーナツ状の物をフリクションプレートと呼びます。このフリクションプレートは銀色の2枚のリンクプレートでボルト&ナットで挟みます。ここにはベアリングやブッシュなどはありません。あるのはフリクションプレートのみ。これがある意味軸受けになっています。
軸受けなのにフリクションとはこれ如何に??
そう、これがモールトンのダンパーなのです。ここのナットの締め付け具合でダンピング調整をするのです。
昨今の高度になってきたMTBサスペンションとは大違い。なんともアナログチックなショックアブソーバーです(^^;
ところでナットの締め付け具合で調整するということは、締め付け部に近い内側は強くこすられ摩耗しやすいと言えるわけで偏摩耗しやすいとも言えます。ので、フリクションプレートも交換。

上ワン 下玉押し

さて、フロントサスペンションがこういう状態だったのでヘッドパーツも怪しいかも。と言うわけでこちらも確認。
左側の写真は上ワン。一筋の線が見えますが特に凸凹はありません。。
右側の写真は下玉押し。こちらの方が下にあるから余計に砂や埃による悪影響を受けやすいと考えられるわけで、実際そうでした。こちらはちょっと当たりの荒れているところがあります。
が、このヘッドパーツはカートリッジベアリングタイプ。ワンや玉押しはあくまでもケースでしかなく、ベアリング自体がここを転がるわけではありません。ベアリング自体には問題はなかったのでそのまま組んじゃいました。ここは次回オーバーホールをするときにでも交換って事で。

まだまだ続く。

7月31日
じつは今回のオーバーホールにあたりちょっと気になっていたことがありました。
と言うのは前回不具合が生じて直したはずのBBがまたしても緩んでおりました。うむむむ....
前回のトラブル時にも書きましたが、このBBはカートリッジベアリングを使用するBBで、ツバ無しタイプのカップ(カートリッジベアリングなので玉押しや受けではない)でしかなく、通常のツバ付きのように端面がフレームに当たってグイッと締め付けることでネジの伸びによる締結を期待できないタイプのカップです。まあその反面チェーンラインを好きなように設定できるというメリット(普通そんな必要はないけど)があるのですが。
うむむむ....これまた対策を施して対処。
それにしてもハブ、BBなどのベアリング、シマノやカンパニョーロなど大手を除いては、たいがいカートリッジタイプのラジアルベアリングを使用しています。これらのベアリングを使用するのは予想するに、汎用のベアリングを使用できるというところにあり、すなわち安く作れるからというのがあると推測します。で、宣伝文句には「滑らかなカートリッジベアリングを採用」などと書くものだと思うのですが、実際は・・・・????
たしかにベアリング自体は滑らかなんですが、自転車という使用状況を考えると実際問題どうなんでしょう?
まず大前提としてカートリッジベアリングがしっかりおさまる(緩すぎず、きつすぎず)ハウジングである必要があるのですが、現実は・・・・。きついのもあれば指で押すだけですんなり入っちゃうのまである。特にハブなんてスポークで引っ張られるわけで、1本当たり100キロで張られるとすると32本で3200キロ、36本で3600キロで引っ張られるわけですよ。と、ハブ単体の時に比べホイールとして組まれた状態では明らかにベアリングハウジングの変形は起こるはずです。実際カップ&コーンタイプのハブは単体の時とホイールとして組んだあとでは転がりが違いますから。と言うことはハブ単体として売られている状態(通常ハブって単体で売られていますよね)でベアリングが既に入っているということは・・・・ま、当然ホイールとして組んだときに適正状態になるようなきつめのハウジングに圧入されているとして、しかし自転車ってのは等荷重状態で使用されるわけではなく、登りでダンシングすれば、下りでジャンプ後着地という使用条件もある。と、なおさら変形するわけで・・・・
それにラジアルベアリングをプリロードをかけてガタを取るというのはいかがなものか?
ラジアルベアリングは半径方向に対しての軸受けであって、スラスト方向へは関与しない。それなのにまるでカップ&コーンのようにプリロードを与えてガタを取るとは・・・・ただ単にベアリングのスムースな動きを悪くさせているだけにしか思えないんだけど・・・・
何故ヘッドパーツのようなアンギュラーコンタクトベアリングを使用しないのだろう?
ではカップ&コーンタイプがベストかというとこれまた問題があって・・・・

と、いつもながらに自分のペースで書きまくってしまった。スミマセン。

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