整備日誌    2005年1月編

1月1日(元旦)
う〜ん、2年越しになってしまった(^^;
さてマニトウはストローク調整に伴うスプリングレートの変化がないことをウリにしております。というか、ストローク変更と共にレートも変わるのはおそらくロックショックスの特許かなんかなのでは?と想像するのですが。だからあえてそうじゃないというのをアピールしていると想像します。ま、これが正しいかどうかは別にして・・・・
で、レートが変わらなきゃ12月18日に書いた不具合が起きるわけで、じゃあどう対処したかというと、「プリロードが変わる」という仕組みにしました。
初めにこのシステムを採用したのはマニトウブラックでした。ブラックではワンタッチでストローク変更ができ、それに伴いプリロードが変わる仕組みでした。

ワンタッチで変わるのならこのような仕組みでも良かったわけですが、ダイアルで好みのストロークにするとなるとあの仕組みでは実現できない。と言うわけでマニトウは考えた。のがこの写真。ここまで来ると意地としか思えない(^^;
写真よーく見てください。ヨーク見るとスプリングの中にもう一個スプリングがあるのがわかります。そう、ダブルスプリングになっております。で、12月18日の写真をもう一度よーく見ていただきたいのですが、ストロークが短くなると黒い樹脂が下(写真では右)に移動することで、相対的に銀色のシャフトが出っ張ることになります。と言うことは中の小さなスプリングを押すことになり、すなわちプリロードが増えることになります。
なかなかよく考えたものではあります。
更に、もしこのサスペンションが硬いと感じたならば、内側のスプリングを外すことでよりソフトなサスペンションにさせることができます。ただし、ストロークを短くしていってもプリロードは変わりませんが。
と言うわけでマニトウの意地?を感じるシステムではあると思った次第です。


1月9日
本日KJさんが「漕いでいるとキューキュー音がする」ということで早速対策に取りかかる。音ってのは色々なところから伝わってきて耳に届くので、思わぬところが原因のこともあります。
さて色々お話を伺っているうちにハブのロックナットも緩んでいるということで確認。緩んだ後に変に閉まってしまったのか異様に硬い。これが原因か?とりあえず一度バラしてクリーニング&グリスアップ&対策後再組み付け。しかし音は鳴りやまず。とりあえず怪しそうな所をいくつかチェックするも相変わらず音がします。そんなところへ一緒に来られたTRさんが「たまにこういうところが原因で音がする事ってありますよねぇ」と謙虚気味におっしゃられる。そういうこともあるかと思いスプレー式潤滑剤を一吹きして再度乗ってもらう。と、見事に音が消えた。
異音解消にスプレー一吹きたった数秒で解決。その助言があるまで私が費やした時間は数十分以上。TRさん、KJさんに感化されてMTBにハマってまだ1年も経っていない。私自転車整備して10年以上。立場まったく無しでした(^^ゞ
こんなこともあるさ・・・・


1月13日
お客様の自転車をバラしてはなんだかんだと批判をしていますが、ここはひとつ、弊店のリキッド号のサスペンションをバラして批判してみようと思います。
まあなんと言ってもどのように使われているかよくわかっているので、楽しみでもあります。
オイルの跡が気になるスペックとしては購入後2年間ノーメンテ。最近インナーチューブにオイルの跡が付くのがちょっと気になるというところ。他は乗っていて特に不具合は感じません。まあ気持ち的にはもうちょっとコンプレッションダンピングを弱くしたいというくらい。
使用状況としてはダウンヒルユースや近所のお山、それに通勤。また試乗車君としても活躍しており、不特定多数の方が乗ることもあります。
富士見ではAもBもCも走りますし、TREK LIQUIDとの組み合わせではAコースでも結構なペースで走れます(本人はそのつもり)。通勤でも階段を見つけては下りまくっております。

さて、フォークをバラす前にどうせフォークを抜くわけですからヘッドパーツもチェック。
案の定というか思っていた以上にキテます(^^;
ご覧の通りヘッドパーツは錆びまくっております。グリスも泥やらが入り込みとても誉められた状態ではありません。
でもその兆しは感じておりました。バイクを汚した後に(たまに)洗車するわけですが、その後ハンドルを操作しようとするとセンターあたりでコクッと止まる。ま、ありがちと言えばありがちなことなんですが、明らかにおかしいとは思っておりました。が、シカトしてそのまま乗っていればそのうち直っちゃうし(完治すると言うことではありません)、一度このようになってしまった物はどうあがいても元には戻らないわけですから、ダメになるまで乗ろうと思っておりました。ら、こんな具合になっていたんですねぇ・・・・
なお、高圧洗車機は一度も使用しておりません。あれを使うともっとひどいことになっていたと思われます。
というところで、フォークでもバラしてみますか。
続く。


1月21日
まずはバラしてオイルを確認。なんだけど画像がない。どうやら消してしまったよう。う〜む・・・・。ま、しかし意外やきれいでした。まあ今時のサスペンションはスプリング側とダンパー側でオイルが別れていますので、ダンパーオイルがスプリングの削りカスなどで汚れてしまうことはありません。が、上写真のようにインナーチューブには汚れが付着しておりましたのでちょっと気がかりでした。
とは言うもののサイロSL(なんです、うちのは)はピュアダンピングシステム。これは密閉式なのでオイルが漏れてくることはありません。漏れた時にはエアを吸うということなのでスコッて抜けたようになってしまいますし、吸うときに一緒に水分やゴミなどを吸う恐れもあります。しかし抜けたような感じはなかったしオイルの汚れもなかったのでまあ一安心。またこのフォークはロックアウトもできるのですが、エアを吸うとロックアウトもかかりづらくなります。その兆候もありませんでした。
更にロックショックスの中級グレード以上ではスムースな摺動をさせるためにダストシールの下にオイルを含ませるフェルト状のものがあります。これは結構頻繁にオイルを塗布してやるべきものなのですが、フォーク装着後やったのはおそらく2度3度程度で(^^ゞ・・・・自慢できません。
う〜ん、ま、とにかく出てきたオイルはきれいだったということです。

コンプレッションバルブアッシー

さて、サイロSLのダンパーは密閉式ですが分解することはできます。で、バラしたのがこの写真。
本当はこの外側にパイプ状のものがあり、その中にこのバルブが入っているのですが。
まずはコンプレッションバルブ。これはサスペンションのトップキャップそのものに付いています。ですのでインナーチューブ上側に固定されます。
で、これらの部品を細かく説明しようかと思ったのですがあまりにしつこいのでやめておきます。
ところで左側にスプリングが付いています。これは何か?
これは容積調整用のスプリングなんですね。サスペンションが縮むということは、アウターチューブがインナーチューブに入り込んでいくわけで、それに伴いフォークオイルもグググッと押されるわけです。
ところで液体は非圧縮性流体と言って、圧力がかかってもほとんど体積変化しない流体です。押されるのに体積変化しないということでは矛盾が生じるわけで、これではサスペンションは沈んでくれません。ので、オイルの逃げを作ってやらなければなりません。
サスペンションが縮むと写真真ん中あたりの白い部品の右側にオイルが溜まります。と、オイルに押されて白い部品がスプリングにうち勝ってぴゅーっと左に移動するわけですね。そうやって体積調整しています。
自動車好きの方なら単筒式ショックアブソーバーのフリーピストンにかかる高圧窒素ガスの役割とでも言えばわかりやすいでしょうか?気体は圧縮性流体と言って圧力によって体積が変化する流体です。なんて説明しなくても普段の体験で何となくわかりますよね。
さて、自動車用サスペンションには窒素ガスが使われている、自転車用サスペンションは金属スプリング。少しでも軽くしたい自転車用になぜ重い金属スプリングが使われるのか??
これはおそらくストロークによるエアスプリング効果を嫌ってだと推測します。
ただでさえ軽い自転車、しかもフロントにはリアほど荷重はかかりません。もし金属スプリングではなく窒素ガス(空気でも可)が体積調整用に使われていたら、せっかく良い仕事をしてくれるダンパーを装備しても縮むことで体積調整用ガスがエアサス効果を発揮してしまい、せっかくセッティングの決まったダンピング特性を殺してしまうことになり得ます。金属スプリングなら、線形、巻径、ピッチが変わらなければ常に等レートになりますのでダンパーとしてのセッティングを出しやすいということだと考えます。
しかし軽さを追求したい自転車、しかもSID等に代表されるエアサスは昔のエアサスとは異なり非常にリニアでスムースなエアスプリングぶりを発揮してくれます。いつかはここもエアになるのでは?と勝手に推測します。
なお、リアサスペンションの体積調整にはエアが使われています。これはリアは基本的に体重がかかるから体積調整用エアが多少エアサス効果を発揮しても問題ないからと言うことではないかと、これまた勝手に推測します。
ということでコンプレッションバルブだけでこれだけ費やしてしまった。次はリバウンドバルブに続く。


1月29日

ピュアダンパーのしくみ
リバウンドバルブ
リバウンドバルブ バラシの図

まずロックショックスのピュアダンパーの構造を見てみましょう。右の写真がその構造。わかりやすいように透明インナーチューブになっています。こういうのを作ってくれると理解しやすくて大変うれしい。YMJさん、ありがとう。
ただバックが赤い壁でオイルが赤いとちょっとわかりづらいけど。
さて、インナーチューブの上側にはコンプレッションバルブが入っています。前回の整備日誌を見ていただければなんとなくわかってもらえるかと思われます。
で、その下にオイルが一杯入っていて、更にその下にリバウンドバルブが入っています。
右の写真をよーく見ればわかりますが、前回説明したようにコンプレッションバルブはトップキャップにくっついているので動きません。が、下のリバウンドバルブはロッドを介してアウターチューブに取り付けられています。ので、アウターが動くとリバウンドバルブはシュコシュコと上下に動くわけです。なんとなく想像してみてください。

で、リバウンドバルブをバラしたのが右中の写真。
ロッドに窓があって白い物が見えますね。オイルはここの穴を通って(ここだけじゃないけど)流れます。
まあダンパーってのは水鉄砲みたいな物で・・・・などと比喩されますが、まさしくこの穴をオイルが通ることで抵抗が生じ、その抵抗こそが減衰力なわけです。で、ここの面積を変えることで減衰力を増やしたり減らしたりすることができます。
ただ穴だけだと(安いやつだとそういうのもありますが)サスペンションの動く速さに減衰力は依存してしまい、その時々に望まれる減衰力をうまく発揮させることができません。ので、ピュアダンパーでは写真に写っている緑の部品と、そしてリーフバルブを設けることで上手に減衰力をコントロールしています。

さてリバウンドバルブですが、バラすと右下写真のようになります。で、オーバーホールキットの中には茶色いリングと白いシムが入っていました。これは何か?
英文説明書によりますとこれを変えろと書かれていました。
で、これは何か?
緑のやつの代わりに茶色いリングにはめ変えます。これはまさしくオイルの通路でリバウンドダンピングを司る物です。これに変えることで筒との隙間が増えるなり減るなりしてダンピング特性が変わるのでしょう。
では白いのは?
これはですね、リバウンドには直接関係ないんですよ。リバウンドダンピングを発生しているのはロッドの真ん中にある穴と緑(茶色)のパーツと筒との隙間、そしてボルトと緑(茶色)の間にある金色がかったシム。これらでリバウンド減衰力を発生させています。で、銀色のシム(白いシム)はコンプレッション時の逃がし用ワンウエイバルブになっています。コンプレッション時にリバウンドバルブがいたずらをしないように圧を逃がすんですね。
で、金属製のシムからプラスチックのようなシムに変わっています。おそらくシムが硬くてたわみづらく、逃がしきれなかったのでは?と推測します。
私にとってはコンプレッション側減衰力が高く感じ、ほとんど解放で乗っておりましたので(これじゃイカンですね)、これを変えることでコンプレッション側減衰力への悪影響が阻止され、望みに近くなればと期待します。

以上こんな説明はどこにも書かれておりません。私が勝手に悩み、考え、調べた物ですので合っているかどうかは定かではありません。私は自転車のプロではあるけれど、サスペンションのプロではありません。合っているのか、間違っているのか、サスペンションのプロからの指摘をお願いしたいものです。

と言うところで次はブッシュ編に続く。

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